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Shopifyでイベントチケットを売るだけなら、アプリは1本も要りません。「General Admission」という商品を作り、在庫数を会場のキャパシティにし、Physical product(配送が必要な商品)のチェックを外して配送ルールが走らないようにする。これで代金は受け取れます。
問題は当日です。折りたたみテーブルと、並んでいる人の列と、スマホに表示された注文一覧。ここで気づきます。売ったものはチケットではなく注文確認メールで、目の前の人はそれを友人9人に転送できます。
このカテゴリの本当の境界線はここにあります。「Shopifyでチケット代金を受け取れるか」ではありません。誰が固有のチケットを発行し、誰が入口でそれを検証するのか。そしてそれをアプリに任せると決めた瞬間、まったく異なる3つの課金モデルのどれかを選ばされます。
調査日は2026年9月2日、料金はすべて各アプリのShopify App Storeリスティングに掲載されたUSD表記です。
「アプリが必要」とShopify自身が書いている
この点は珍しく明文化されています。Shopifyのチケット販売ガイドで、自社サイトでチケットを扱う場合の欄には「Requires a ticketing app」とだけ書かれています。対する専用チケットプラットフォーム側の欄は「QR codes, scanning app, waitlists, check-in tools」です。
同じページのFAQはもっと直接的です。「Yes, anyone can sell tickets on Shopify. Start by building your storefront and taking payments for tickets, then use an event ticketing app to issue those tickets to buyers.」
決済は標準機能で。チケットの発行はアプリで。この分担がこの記事のすべてです。
POSのスキャナーは、思われているものとは違う
最も多い誤解が「Shopify POSがあるからチケットもスキャンできるだろう」というものです。POSは確かにバーコードを読みますが、ヘルプセンターは対象を明示しています。バーコードスキャナーは「can quickly add products to your cart during checkout by scanning product barcodes」であり、カメラスキャナーが読めるのは「products, order receipt barcodes, Shopify physical gift card QR codes, customer Shop passes, and discount code barcodes」です。
イベントチケットはこのリストにありません。POSで顧客のチケットを読み取っても、その参加者がチェックイン済みになることはなく、同じコードの2回目の読み取りを止めることもなく、参加者レコードが管理画面のどこかに残ることもありません。後述するアプリのいくつかはPOSの中で拡張機能として動きますが、検証ロジックはそのアプリのものであってShopifyのものではありません。
純正のデジタル商品アプリでは、1人ずつ違うコードを出せない
次に試されるのが無料の純正アプリです。デジタル配信にアプリが要ること自体はヘルプセンターが明記しています。「To provide a download link to your customers for a digital product, you must use an app from the Shopify App Store.」
ただし Shopify Digital Products(日本語表示では Digital Products)がファイルやリンクを紐づけるのは、商品バリエーション単位です。「General Admission」を買った全員が同じアセットを受け取ります。参加者ごとに固有のコードを生成する仕組みはなく、それこそがスキャン可能なチケットの本体です。会場マップのPDFを1枚配るには十分ですが、チケットシステムではありません。
カートに入れても、キャパシティは押さえられていない
完売必至の公演を売る前に、もう1つ知っておくべき標準挙動があります。ShopifyはCommitted(コミット済み)在庫を「the number of units that are set aside and can't be sold, such as units in an unfulfilled order, reserved in a draft order, or in a transfer that's marked as ready to ship」と定義しています。
このリストにカートと決済中のチェックアウトは入っていません。通常商品なら軽微な話ですが、200席の会場の販売開始時刻には、在庫が減るのは注文が完了した瞬間だけということになります。同時に決済に進んだ買い手が、法定収容人数を超える枚数を成立させ得ます。Shopifyの「アクセス集中時の対応」ガイドが提示する手段も、カートに追加ボタンを手作業で消す、配送料金を削除する、在庫を0にする、といった粗い道具だけで、イベントを想定したものはありません。
誰も並べて書かない、3つの課金モデル
ここからが本題です。これらのアプリはリスティング上では似て見えますが、互いに換算できない3つの軸で課金します。
| アプリ | 評価(レビュー数) | Built for Shopify | 課金モデル | 入口の価格 |
|---|---|---|---|---|
| Evey Events & Tickets | 4.5(314) | なし | 基本料金+1枚あたり | 無料インストール+$1.00/枚 |
| GM Event Ticketing | 4.9(46) | あり | 基本料金+1枚あたり | 無料インストール+$1.00/枚 |
| Tixator ‑ Sell Event Tickets | 5.0(6) | なし | 基本料金+1枚あたり | 無料インストール+$0.29/枚 |
| Ticket Spot ‑ Event Ticketing | 5.0(38) | なし | 定額+参加者数上限 | 月20名まで無料 |
| Experiences: Events & Tickets | 4.8(77) | なし | 基本料金+予約売上の% | $9/月+1% |
| Easy Tickets & Events | 4.7(3) | なし | 無料、枚数上限 | 無料、月500枚まで |
1枚あたり課金は、売れば売るほど罰を受けます。定額制は、ティアが尽きるまでは何をしても罰を受けません。売上シェア型は枚数に無関心で、代わりに単価に反応します。$200のチケットを100枚売るのと$50を400枚売るのは同額で、$200を400枚売れば両者よりずっと高くなります。
金額にするとこうなる
同じストア、同じ月、3つの販売量。各アプリについて、掲載された上限がその販売量を実際にカバーするプランのうち最安のものです。
| 月間販売枚数 | Evey | GM Event Ticketing | Tixator | Ticket Spot | Experiences(単価$50の場合) |
|---|---|---|---|---|---|
| 300枚 | $199 | $244 | 約$80 | $29.99 | $204 |
| 1,200枚 | $489 | $699 | 約$341 | $99 | $429 |
| 5,000枚 | $1,439 | $2,249 | $1,000 | 掲載プランなし | $1,379 |
この表から2つのことが読み取れます。
1つは、月1,200枚の時点で最安と最高の差が7倍あることです。全員が「無料インストール」から説明を始めるため、リスティングを見比べてもこの差は見えません。
もう1つは、上限側で順序がひっくり返ることです。Ticket Spotは月2,500名までは圧倒的に安いのですが、掲載されているティアはそこで終わります。Business Plusが月$149で2,500名まで、その上は掲載プランも超過料金の記載もありません。シーズン途中でこの線を越える会場にとっては、月$600節約してくれていたアプリが、最も忙しい四半期に移行プロジェクトへ変わります。
そして、ここで比較した6本のうちBuilt for Shopifyバッジを持つ1本が、検証したすべての販売量で最も高くなります。このバッジはパフォーマンス・デザイン・統合品質の基準であって価格のシグナルではなく、ここではむしろ逆を指しています。
各アプリが、実際には何のためのものか
Evey Events & Tickets

出典: Shopify App Store(Evey Events & Tickets、2026-09-02時点)
ニューヨークのStaytunedが提供、2013年7月公開。この中で最も古く、レビュー314件と圧倒的な母数を持ちます。料金は無料インストール+$1.00/枚、Growth $19/月+$0.75、Standard $49/月+$0.50、Professional $189/月+$0.25で、指定席とKlaviyo・Mailchimp連携は最上位に入っています。
マーチャントが驚いた点として繰り返し挙がるのが2つあります。1つは管理画面からは分かりにくいプラン制限で、2026年6月27日編集の米国Lanterns and Legends Ghost Toursのレビューが的確です。「the admin panel allows you to configure recurring events while on the free plan, but it doesn't make it obvious that customers cannot actually purchase tickets for those recurring events unless you upgrade.」同じレビューは週末にライブサポートが無いことにも触れています。イベントが起きるのはまさに週末です。
もう1つは、リスティングの「Works with」にShopify POSが載っていないことです。非対応と確定したわけではありませんが、POS機器での入場管理を前提にするなら、契約前に提供元へ確認すべき点です。
GM Event Ticketing

出典: Shopify App Store(GM Event Ticketing、2026-09-02時点)
ネバダ州のGuest Manager提供、2019年10月公開、レビュー46件で4.9。この比較の中でリスティングヘッダーにBuilt for Shopifyバッジを持つ唯一のアプリです。入場オペレーション面も最も充実しており、Apple/Google Walletパス、チェックインをスマートグリッドに置くShopify POS UI拡張、会場のWi-Fiが落ちたとき用のオフラインiOSアプリ、レーザースキャナー対応が揃います。
料金はOn Demandが無料インストール+$1.00/枚、Advanced $19/月+$0.75、Professional $99/月+$0.50、Plus+ $999/月+$0.25です。
無料ティアには落とし穴があります。有料チケットは無制限ですが、無料チケットの発行はAdvanced($19/月)からです。無料RSVPと有料VIPを組み合わせる設計なら、無料プランでは足りません。
レビューは長期利用者が多く、話題の中心は入場管理です。2026年6月16日のカナダInnovOak Shopのレビューが運用上の価値を直接語っています。「Parents receive a unique QR code with their ticket ahead of time and use it when dropping off and picking up their child… The attendance tracking is a huge feature for us.」
Tixator ‑ Sell Event Tickets

出典: Shopify App Store(Tixator ‑ Sell Event Tickets、2026-09-02時点)
ドイツ・キールのPLANIS E3 Empathy Engineering GmbHが提供、2025年12月25日公開。この中で最も新しく、レビューは6件(すべて5つ星)です。レビューのシグナルとしては薄いと見るべきです。
注目すべきは料金です。Standardは無料インストールで1枚あたり$0.29。EveyやGMの同等ティアの約3分の1で、iOS・Android向けスキャナーアプリが無料、同時にスキャンするスタッフ数は無制限、Apple/Google Wallet対応、月額固定費はゼロです。Volumeは$250/月+$0.15/枚で、月およそ1,786枚を超えるとStandardより安くなります。Enterpriseは$1,000/月「per individual agreement」で、これは掲載価格ではなく交渉事項です。
非営利向けのレートもあり、承認後は$0.15/枚(承認前は$0.29)となります。
正直な懸念は運用実績です。2026年8月24日の英国Cambridge University Press Bookshopのレビューは「When looking for an alternative ticketing app to Eventbrite, we found Tixator and it ticked all of the boxes for us.」と好意的ですが、公開1年未満のアプリの6件のうちの1件です。
Ticket Spot ‑ Event Ticketing

出典: Shopify App Store(Ticket Spot ‑ Event Ticketing、2026-09-02時点)
カリフォルニア州エンシニータス拠点、2022年4月公開。この中の例外で、参加者数上限つきの定額制、そして自ら「No transaction fees」と明記しています。無料プランは月20名まで。Professionalは$29.99/月または$290/年で月500名、PDFつきQRチケットとモバイルチェックインアプリ。Businessは$99/月または$990/年で上限1,500名、Apple/Google Walletパス、キャンセル待ち、参加登録フォームと同意書が加わります。Business Plusは$149/月または$1,490/年でTicket Spotのブランド表示を消し、イベント用の独自ドメインに対応、上限は2,500名です。
通常の単価で月1,500枚程度までのストアであれば、ここで比較した6本の中では明確に最安です。ただし確認すべき点が1つあります。リスティングはインタラクティブな座席表を機能として掲げていますが、どのティアに含まれるかは書かれていません。指定席が重要なら契約前に確認してください。
リスクは上限そのものです。月2,500名を超えると掲載プランも超過料金の記載もありません。フェスの販売開始前に確認すべきで、開始後では遅すぎます。
Experiences: Events & Tickets

出典: Shopify App Store(Experiences: Events & Tickets、2026-09-02時点)
ワシントン州ウッディンビルのExperience Technology Corporation提供、2018年7月公開、レビュー77件で4.8。無料プランは無く、この中で唯一、売上に対して課金します。Basic $9/月+予約売上の1%、Premium $39/月+0.75%、Preferred $129/月+0.5%です。
このモデルが合うのは特定の形の事業です。ツアー、テイスティング、クラスなど、枚数は多くないが単価が高く、実態がコンサートより予約に近いもの。$15のチケットを大量に捌く興行には向きません。
リスティング自体に注意点があります。Basicティアの説明が「Up to 100 bookings or $100 in sales/mnth」となっており、上位ティアとの整合が取れていません。この数字を前提に設計せず、提供元へ実際の閾値を確認してください。
Walletパス対応はリスティングに記載がないため、Apple/Google Walletでの配布を前提にしないでください。
Easy Tickets & Events と、チケットアプリではないもの1本
UpsellShark提供のEasy Tickets & Eventsは2026年5月7日公開、現在は無料で、範囲は「Up to 500 tickets/monthly」です。レビュー3件、上限より上のプランは掲載されていません。ワークショップのシリーズを無料で回すには合理的で、シーズン全体をこれに賭けるものではありません。チェックインはQRコードのスキャンとリスティングに書かれていますが、Walletパス対応については記載がありません。
別枠で1本。Appointment Booking Cowlendarはチケット関連の検索で頻繁に出てきます。「Event check-in」のカテゴリタグを持ち、レビュー2,194件、Built for Shopifyバッジ付きだからです。ただしこれは予約アプリです。課金軸は予約売上(各ティアで月$1,000/$3,000/$10,000)で、プラン機能一覧にQRチケットの発行も入場スキャンもありません。「30分枠を予約してもらう」なら優秀ですが、「19時に800人が到着する」なら、そもそもカテゴリが違います。
選び方
月1,500枚程度まで、単価は問わない場合。 Ticket Spot。定額で1枚あたりの出血がありません。今シーズン2,500名を超えないことと、座席表がどのティアに含まれるかを確認してください。
大量販売でコストを抑えたく、新しいベンダーを許容できる場合。 Tixatorの$0.29/枚は老舗アプリの1枚あたりコストの約3分の1で、無料インストールのティアからWalletパスとスキャナースタッフ無制限が付きます。レビュー6件がその対価です。
入場オペレーションが最難関の場合(大規模なゲート、不安定な会場Wi-Fi、POS機器)。 GM Event Ticketing。オフラインiOSアプリとPOSスマートグリッド拡張が、表中で最も高い1枚あたりコストを受け入れる理由になります。無料チケットを配るならAdvanced($19/月)を予算に入れてください。
大規模な定期プログラムを既に運営しており、機能の深さと導入実績を重視する場合。 Evey。開始前に自分のプランでの繰り返しイベントの挙動を確認し、POSスキャンは別途確認してください。
枚数は少なく単価が高い、ツアー/テイスティング型。 Experiences。販売量が少ないうちは売上シェアが安く、枚数を気にしない唯一のモデルです。
小規模ワークショップの無料RSVP。 Easy Tickets & Events、またはTicket Spotの無料プラン(月20名)。
どれを選んでも、分担そのものは変わりません。決済・顧客レコード・注文はShopify側に残り(決済手数料はShopifyで2.9%+30¢から)、チケットという資格情報とゲートはアプリ側が持ちます。この線は動かせないので、実際の判断は「アプリが自分の担当分をどう課金してくるか」だけです。
確認できなかったこと
- EveyがShopify POSでのチェックインに対応するか。リスティングの「Works with」にPOSが無いだけで、非対応と確認できたわけではありません。
- Tixatorの「initial 25 tickets free」が1回限りか毎月かは不明です。300枚の金額を概算で示しているのはこのためです。
- Ticket Spotの月2,500名超の料金。掲載ティアも超過料金の記載もありません。
- ExperiencesのApple/Google Walletパス対応可否と、Basicティアの実際の売上閾値。
- Easy Tickets & EventsのWalletパス対応。リスティング本文に記載がありません。
- チケットの注文がShopifyのtransaction feesの扱いで通常注文と異なるか。確認できたのは「2.9%+30¢から」という決済手数料のみで、チケット固有のtransaction feesについては何も主張しません。
なお「カートは在庫を確保しない」と明言したShopifyの一次情報ページは見つかりませんでした。上記の結論は、Shopify自身によるCommitted在庫の定義(何が在庫を確保するかを列挙しており、その中にカートが含まれない)から導いています。
参考・出典
- How To Sell Tickets Online in 2026(Shopify)
- Barcode scanners — Shopify Help Center
- Selling services or digital products — Shopify Help Center
- Inventory states — Shopify Help Center
- Managing increased sales — Shopify Help Center
- Evey Events & Tickets — Shopify App Store
- GM Event Ticketing — Shopify App Store
- Tixator ‑ Sell Event Tickets — Shopify App Store
- Ticket Spot ‑ Event Ticketing — Shopify App Store
- Experiences: Events & Tickets — Shopify App Store
- Easy Tickets & Events — Shopify App Store
- Appointment Booking Cowlendar — Shopify App Store
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