この記事でわかること
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Shopify Inboxは無料で、日本語UIがあり、レビューは5,500件を超えています。それでも「カスタマーサポートの一元受信箱」として使おうとすると必ず破綻します。
理由は機能不足ではなく、意図的な縮小です。Instagram・Facebook Messengerの連携はヘルプページごと消え、Shopアプリ内のチャットは2025年2月19日をもって廃止されました。公式チェンジログに明記されています。残ったのは、自社ストアに設置するチャットウィジェット1つだけです。
そしてメールが入りません。公式ヘルプは、AIエージェントがスタッフに引き継げないときの挙動として「ストアの送信元メールアドレスを顧客に案内する。Inbox agentはあなたに代わってメールを送信できない。顧客側からメールを開始する必要がある」と書いています。Inboxはメール送信の出口にはなりますが、受信の入口にはなりません。
この記事では、Inboxで本当にできること・できないことを公式ヘルプで確認したうえで、ヘルプデスクアプリ5本の課金単位の違いを整理し、「月何件を超えたら有料に移る価値が出るのか」を件数別に計算します。調査日は2026年9月1日です。
先に結論
問い合わせが自社サイトのチャットだけなら、件数に関係なくInboxで足ります。 担当1〜2名で月100件未満なら、有料アプリに移る合理的な理由はありません。
support@ 宛のメールが月に数十件あるなら、件数ではなく構造の問題です。 Inboxはメールを受信できないため、GmailとInboxを行き来する運用が固定化します。1件あたり2分の切り替えロスが出るとして、月300件なら月10時間です。
月300件までなら、Chatty AI Chatbot & Live Chatの無料プランかRe:amazeのStarter(59 USD/月)が最安です。 Chattyの無料プランは人間による会話が無制限で、メール連携も含まれます。
日本語UIとLINE連携が必須なら、選択肢は実質1本です。 App Storeのリスティングで日本語対応とLINE連携の両方を明記しているのは、Channel Sales Chat Bot CRM(日本での通称はチャネルトーク)だけでした。
そして最大の落とし穴はAI課金です。 GorgiasのAI Agentは解決1件あたり0.90 USDの純粋な従量課金で、月3,000件・AI解決率50%なら本体料金720 USDに加えて1,350 USDが上乗せされます。「AIを入れれば安くなる」という前提は、課金設計によっては逆に働きます。
Shopify Inboxで本当にできること・できないこと
できること
Inboxはチャット接客ツールとしてはよくできています。商品リンクの送信(Inbox販売チャネルに公開していない商品はグレーアウトします)、割引コードの送信(クリックでカートに自動適用されチェックアウトまで保持されます)、画像・動画の送信、顧客プロフィールの参照、カートへの商品追加・削除のリアルタイム表示、営業時間の設定と時間外の自動返信、Instant answersと呼ばれる定型FAQ(作成数は無制限、顧客には最大100件表示)。
AIエージェント(Inbox agent)も強力です。商品カタログ、ストアポリシー、公開済みのページやブログを参照し、商品推薦だけでなくカートへの追加や注文照会(顧客のサインインが必要)まで行います。
ただし条件が3つあります。early accessで一部のマーチャントにのみ提供されていること、新しいお客様アカウントが必須(レガシー顧客アカウントのストアでは使えない)こと、そしてShopify Inbox自体がBasic・Grow・Advanced・Shopify Plusプラン限定でStarterプランでは使えないことです。「無料のAIがあるからInboxに残る」という判断をする前に、自ストアで実際に使えるか確認してください。
できないこと
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| サポート用メールアドレス宛の問い合わせ受信 | 公式ヘルプに設定手順が存在せず、逆に「顧客側からメールを開始する必要がある」と明記 |
| Instagram DM・Facebook Messengerの受信 | 廃止済み。ヘルプページはInboxトップへリダイレクトされる |
| Shopアプリ経由のメッセージ受信 | 2025年2月19日をもって廃止。既存の会話へのアクセスも失われた |
| WhatsApp・LINE・SMS・電話 | 公式ヘルプに記載なし |
| 会話の削除 | 明示的に不可 |
| Open・Closed以外のステータス、優先度、SLA | 公式ヘルプに記載なし |
App StoreのInboxリスティングには「Email chat」という機能タグが付いていますが、これはカテゴリ分類のタグであって、受信メールチャネルの存在を意味しません。ここは誤解が生まれやすい箇所です。
日本語ストア特有の制約
Inboxのアプリ自体は日本語UIに対応しています。ところがAI周辺機能はそうではありません。
スタッフ向けのAI提案返信(Shopify Magic)は英語のみで、しかも「オンラインストアと管理画面が英語であること」が要件です。Instant answersのAI自動提案も英語のみ。会話の自動トピックラベル(Checkout、Order status、Shippingなど10種)も英語のみです。
一方、顧客と直接やり取りするInbox agentは「顧客が使った言語で返信する」と明記されています。つまり、顧客向けのAIは日本語で動く想定だが、スタッフの作業を減らすAIは日本語ストアでは使えない、という非対称な状態になっています。
2026年夏のアップデートで何が起きたか
Inboxの評価は4.6ですが、直近の低評価は2026年7月から8月の大型アップデートに集中しています。論点は、スタッフとチャットするのにサインインが必要になりリード獲得ができなくなった、未サインインの訪問者が「Shop visitor」と表示され氏名・メール・カート・注文が一切紐づかない、という2点です。ただし公式ヘルプによると、Inbox agentとの会話自体はサインインなしで始められ、会話がスタッフへ引き継がれる時点でサインインが要求される、という仕様です。
Shopifyは2026年8月25日のレビュー回答で、「Sales channels」から「Inbox」「Chat settings」「Collect customer details」に進むと、サインイン必須・氏名とメール必須・匿名チャット許可の3つから選べるようになり、全ストアへ展開中だと説明しています。ただし2026年9月1日時点の公式ヘルプは「Require customer sign-in」「Customer pre-chat form」という旧来の表記のままで、この3択は反映されていません。Inboxを継続利用するなら、管理画面で実際の表示を確認してください。
ヘルプデスクアプリ5本の課金単位
移行判断で最も混乱するのが料金体系です。5本すべて課金の考え方が違います。以下はすべて2026年9月1日時点のShopify App Storeと各社公式料金ページの掲載内容です。
| 項目 | Shopify Inbox | Gorgias | Tidio | Re:amaze | Channel Talk | Chatty |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 課金単位 | 無料 | チケット数(席数課金なし) | 会話数+AI会話数の二重スライダー | 席数(件数ベースのStarterも併存) | プラン+シート+従量 | AI会話数のみ(人間の会話は無制限) |
| 最低有料料金 | — | 10 USD/月 | 29 USD/月 | 29 USD/人/月、またはStarter 59 USD/月 | 2,700円〜/月(税別・年額払い)/App Store表記は36 USD/月 | 19.99 USD/月 |
| 無料プラン | 完全無料 | なし(7日間の体験のみ) | あり | なし(14日間の体験) | あり(履歴は過去30日のみ) | あり(AI 50会話+人間の会話無制限) |
| AI課金方式 | 無料だがearly access限定 | 解決1件 0.90〜1.00 USD | 枠買い切り・上限で自動停止 | 追加解決 0.85 USD | 参加1件 50円 | 追加AI会話 0.40 USD |
| メール受信 | できない | 対応 | 対応 | 対応(無制限受信箱) | 対応 | 対応(無料プランでも可) |
| 廃止済み | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 | |
| LINE | 非対応 | 確認できず | 確認できず | 確認できず | 対応(明記) | 確認できず |
| 日本語UI | あり | なし | なし | なし | あり | なし |
| 注文編集・返金 | できない | できる | できる | できる | 確認できず | 一部 |
| Built for Shopify | 表示なし | 表示なし | 表示なし | 表示なし | 表示なし | あり |
| 評価/レビュー数 | 4.6/5,505件 | 4.3/633件 | 4.8/1,256件 | 4.3/143件 | 4.8/41件 | 4.9/1,803件 |
表から読み取れること
「席数課金だから人が増えると高い」という理解は、Gorgiasについては誤りです。 Gorgiasは席数で課金せず、Basic以上は担当者無制限です。高くなるのはチケット数とAI解決数です。逆に席課金なのはRe:amaze(1人あたり29〜69 USD/月)とChannel Talkのオペレーターシート(1席6,000円/月・税別)です。担当が5名いれば、Re:amaze Basicでも145 USD/月になります。
AI課金の設計思想が真逆です。 Gorgias、Re:amaze、Channel Talkは使った分だけ積み上がる従量型です。対してTidioは「Lyroは上限に達すると停止するため請求が想定外に膨らまない」とリスティングで明言しており、Chattyは「人間の会話は無制限、AI会話だけが従量」という構造です。請求の読みやすさを優先するなら後者、AIで人件費を削る前提なら前者、という分かれ方をします。
注文編集・返金までヘルプデスク内で完結できるかは大きな差です。 Gorgias、Tidio、Re:amazeはいずれも注文の編集・返金を実行できる権限を要求または明記しています。Inboxにはこれがありません。「注文番号を聞いて管理画面に移動して返金する」という往復が、1日に何十回発生しているかを数えてみてください。
評価だけで選ぶのは危険です。 Chattyは4.9・1,803件と数字が突出していますが、5つ星が96%・1つ星が11件(1%)という極端に偏った分布で、平均値から実際の使い勝手は読み取れません。逆にGorgiasは4.3で1つ星が9%(55件)と5本中最多です。ただしその55件が同じ論点とは限りません。たとえばそのうちの1件は約7年利用しているストアによる「7年以上使ってきたが、アプリとサポートの品質が着実に低下した」という指摘で、これは短期の使い勝手とは別の情報です。Channel Talkは4.8ですがレビューは41件しかなく、直近のレビューが2022年10月で止まっています。低評価は件数ではなく中身を自分で読んでください。
件数別の損益分岐
2026年9月1日時点の公開料金による概算です。税・為替・年額割引は含みません。「件数」の定義がアプリごとに異なる点に注意してください(Gorgiasはチケット、Tidioは課金対象会話、Re:amaze Starterは返信した会話、ChattyはAI会話のみ)。Chattyは人間の会話が無制限のため、下表の金額は「その件数をすべてAIが対応した場合」の上限値です。Re:amazeの3,000件は、公式に明記されているのが「100件パック15 USD」までであるため、このパック単価が線形に適用されると仮定した概算です。
| 月間問い合わせ件数 | Gorgias | Tidio | Re:amaze | Chatty | Channel Talk(税別・ALF除く) |
|---|---|---|---|---|---|
| 300件 | Basic 60 USD | 約59 USD | Starter 59 USD | Pro 68.99 USD | Early Stage 2,700円〜+シート |
| 1,000件 | Basic 340 USD/Pro 360 USD | 約59 USD | Starter 134 USD | Plus 199 USD | Growth 9,000円〜+シート |
| 3,000件 | Pro 720 USD | カスタムプラン要問合せ | 434 USD | 999 USD | Growth 9,000円〜+シート |
Gorgiasのプラン切替の分岐点は計算できます。Basic(60 USD+超過0.40 USD/件)とPro(360 USD)が並ぶのは月約1,050件、Pro(360 USD+超過0.36 USD/件)とAdvanced(900 USD)が並ぶのは月約3,500件です。
Tidioは250会話から1,000会話までの帯が59 USDで平坦です。 つまり1,000件に近づくほど1件あたりの単価が下がり、月1,000件では5本中最安になります。ただし300件の帯では、Chattyの無料プラン・Re:amaze Starter 59 USD・Gorgias Basic 60 USDとほぼ横並びで、Tidioを選ぶ決定的な理由にはなりません。また月2,000会話を超えるとカスタムプラン(要問い合わせ)になり、社内での予算化が難しくなります。
AI併用時の上乗せ
AI解決率を50%と仮定した場合の、本体料金への追加分です。前提は次のとおりです。Gorgiasは解決1件0.90 USD。Re:amazeはBasic 1席(AI解決5件込み)で、超過分が1件0.85 USD。Channel TalkはチャットALFが1件50円で、有料プランに付く30,000AU(1AU=0.1円、チャットALF約60件分=3,000円相当)を控除。Chattyは上の表と同じくPlus(199 USD・AI会話1,000件込み)を基準に、超過分が1件0.40 USD。
| 月間件数 | AI解決件数 | Gorgias | Re:amaze | Channel Talk | Chatty |
|---|---|---|---|---|---|
| 300件 | 150件 | +135 USD | +約123 USD | +約4,500円 | プラン枠内 |
| 1,000件 | 500件 | +450 USD | +約421 USD | +約22,000円 | プラン枠内 |
| 3,000件 | 1,500件 | +1,350 USD | +約1,271 USD | +約72,000円 | +200 USD |
ここが記事の核心です。Gorgiasは「席数無制限で公平」という設計ですが、AI Agentは解決1件あたり0.90 USDの純粋従量です。月3,000件でAI解決率が50%なら、本体720 USDに対してAIだけで1,350 USDが上乗せされます。
Gorgias自身は「解決1件0.90 USDは、同じチケットを人が処理するコストより安い」と説明しています。この主張が自社に当てはまるかどうかは、自社の問い合わせ1件あたり人件費を先に算出しなければ判断できません。時給2,000円の担当者が1件を6分で処理しているなら1件200円です。1USD=150円で換算すると0.90 USDは約135円なので、この場合はAIのほうが安いことになります。しかし1件2分(約67円)で処理できているなら逆転します。
なお、GorgiasのAI Agentは「AIが単独で完全解決した会話のみ課金、人間が介入すればカウントしない」という仕様です。この点は課金設計として合理的です。
選び方のルール
チャネルが自社サイトのチャットだけなら、Inboxを継続する。 件数は判断材料になりません。ただしプラン要件(Basic以上)とレガシー顧客アカウントの制約は確認してください。
メールが入っているなら、件数に関係なく移行を検討する。 これは料金の問題ではなく構造の問題です。判断軸は「GmailとInboxを行き来する時間×時給」です。
月300件までなら、Chattyの無料プランが移行の第一候補になります。 人間の会話が無制限で、メール連携が無料プランに含まれ、5本中唯一Built for Shopifyバッジを保有しています。ただし再インストール時は無料トライアルが適用されず、プラン有効化と同時に満額請求されるという報告があります(開発元が低評価レビューへの回答で仕様として説明しています)。
日本語UIが必須なら、Channel Talkの無料プラン(0円)から始める。 無制限チャットとメール・Instagram連携が使えます。ただし無料プランはメッセージの検索・閲覧が過去30日以内に制限されるため、履歴を資産として蓄積したいならEarly Stage(2,700円〜/月・税別)以上が必要です。AIエージェントのALFは32か国語対応が公式に明記されており、日本語での自動応答が想定されています。
LINEが問い合わせ経路に含まれるなら、実質Channel Talk一択です。 他の4本については「非対応」ではなく「App Storeのリスティングでは確認できなかった」というのが正確な表現です。導入前に開発元へ確認してください。
月1,000件を超え、担当が3名以上ならGorgiasかTidio。 Gorgiasは席数無制限なので担当が増えるほど有利に働きます。
月3,000件を超えるなら、AI課金の設計思想で選ぶ。 請求の予測可能性を取るならTidioかChatty、AIで人件費を削減する前提が明確ならGorgiasかRe:amazeです。
導入前チェックリスト
- 自ストアはInbox agent(無料AI)の3条件(early access対象・新しいお客様アカウント・Basic以上)を満たしているか
- support@ 宛のメールが月に何件来ているかを数えたか
- 問い合わせ1件あたりの人件費を算出したか。AI課金の是非はこの数字なしに判断できない
- 検討中のアプリの「件数」の定義は何か。チケットか、会話か、AI会話のみか
- 無料プランの制約を読んだか(Channel Talkは履歴30日、Chattyの再インストール時はトライアル対象外)
- 注文編集・返金をヘルプデスク内で完結させる必要があるか
- 日本語UIと日本語サポートを分けて要件定義したか
- 現在の会話履歴をどうするか。Inboxの会話データの保持期間・エクスポート方法・アンインストール時の扱いは、公式ヘルプのInboxセクションでは確認できませんでした
まとめ
判断の順序は3つです。
まず、Inboxの構造的な欠落が自社に当てはまるかを確認します。 メールが入らない、SNSが入らない。この2点は機能不足ではなく、Messenger連携とShopアプリチャットの廃止という縮小の結果です。チャットだけで運用が回っているなら、無料のInboxを使い続けるのが合理的です。
次に、料金ではなく課金単位で比較します。 チケット数、席数、AI解決数、AI会話数。同じ「月100 USD」でも、自社の問い合わせが増えたときの伸び方がまったく違います。担当者が増える見込みがあるならGorgias、問い合わせ件数が読めないならChattyかTidio、少人数で大量に捌くならRe:amaze Starterという整理になります。
最後に、AIの課金設計を確認します。 「AIを入れれば安くなる」は自動的には成立しません。自社の1件あたり人件費とAI解決1件あたりの単価を並べて、初めて判断できます。
料金体系はSaaSの中でも特に改定頻度が高い領域です。この記事の数値はすべて2026年9月1日時点のShopify App Storeと各社公式料金ページの掲載内容に基づいています。稟議に使う前には必ず最新の料金ページを確認してください。
自分が所有する2つのShopifyストアの間を、Shopifyは何も同期しません。ロケーションは1ストアの中の概念、Marketsは1ストアから多国を売る機能、Shopify Collectiveはドロップシップの関係で、1商品100バリエーションの上限があり、アンインストールすると取り込んだ在庫が0になります。つまりマルチストア同期は完全にアプリの領域なのですが、実在する6本のアプリは6種類の別々の単位で課金しています。Syncioは宛先ストアに商品数、供給元に注文数。Tipoは宛先ストアの全バリエーション数(同期していない分も含む)。Synkroの月25ドルプランは接続ストアごとに25ドル。Trunkは全チャネル合計の直近3か月平均注文数。同一条件の2ストア構成で見積もると、月額はおよそ10ドルから119ドルまで開きます。2026年9月2日にShopify App Storeで確認しました。