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Shopifyの在庫は「個数」であって「ロット」ではない|複数拠点のバッチ管理が月19.99ドルにも199ドルにもなる理由

Shopifyヘルプセンターの在庫の定義は「販売可能な各バリエーションの個数」です。個数では、どのロットがどの顧客に出荷されたかは答えられません。回収(リコール)で必要なのはまさにそれです。Shopify管理画面にはロット番号も賞味期限も保存する場所がありません。2026年9月2日時点で実在するバッチ管理アプリ3本を確認したところ、ほぼ同じ機能が開くリスティングによって19.99ドルにも199ドルにもなっていました。課金の分母が3本とも違うためです。Freshlyは無料プランを10商品で、Batchlyは1商品で区切る代わりに拠点数は無制限、Batch ExpiryProは複数拠点対応を19.99ドルで売っていますがレビューは0件です。FDAのFood Traceability Ruleのページが今も「2026年1月20日」と表示している件も含めて整理しました。

AIECアプリ研究所 AI編集部公開日 更新日 読了 13#Shopifyブログ運営#アプリ比較#初心者向け

この記事でわかること

この記事の目次Contents閉じる開く

Shopifyヘルプセンターの在庫設定のページを開くと、在庫の定義がこう書かれています。

Store inventory represents the number of each product variant that you have available to sell.(ストアの在庫とは、販売可能な各商品バリエーションの個数を指します)

個数です。これがモデルのすべてです。Shopifyは「この拠点にこのバリエーションが240個ある」ことは知っています。そのうち180個が3月入荷のロットで60個が7月入荷のロットであることは知りませんし、どちらが先に期限を迎えるかを記録する場所もありません。

多くのストアではこれで問題ありません。ただし食品、飲料、サプリメント、化粧品、ペット用品、医薬品関連を扱っているなら、この差は「2時間で終わる回収」と「2週間かかる回収」の差になります。

Shopify管理画面が実際に用意しているもの

ヘルプセンターの在庫セクションが列挙している設定項目は、在庫追跡、在庫切れ時の挙動、CSVのインポート・エクスポート、bin location(保管棚)、複数拠点とアプリの扱いです。この一覧が全部であり、ロット番号もバッチも賞味期限もどこにもありません。

バッチ管理と混同されやすいものが2つあります。

bin location(保管棚)。ShopifyはCSVで管理するbin locationに対応しています。binは倉庫内の「場所」です。ピッカーがどこへ歩けばいいかは分かりますが、製造日もロットコードも持ちません。同じbinに2つのロットが入っていれば、Shopifyから見て両者は区別できません。

batch fulfillment。Shopifyは複数注文をまとめて処理することを「batch」と呼びます。これは注文側の作業効率の話で、ある個体がどの製造ロットに属するかを追跡することとは無関係です。

メタフィールドを使えば商品に賞味期限を持たせることはできます。ただしそれで得られるのは「ページ上の日付」だけです。引き当ては行われません。次の注文に古いロットを自動で割り当てる仕組みはShopifyにありませんし、半年後に「ロット A-0713 を受け取ったのはどの43人か」を答える仕組みもありません。

Shopify自身のApp Storeに手がかりがあります。Inventory optimizationカテゴリーの中に「Expiry dates」という絞り込み条件が用意されています。Shopifyはこれを「アプリがやること」として分類しているわけです。

料金が噛み合って見えない理由

このジャンルで米国App Storeに現在掲載されているアプリは3本です。料金を並べると意味不明に見えますが、原因は3本とも課金の分母が違うことにあります。

Freshly Batch InventoryBatchly: Lot & Expiry TrackingBatch ExpiryPro
開発元Freshly Commerce(カナダ)Helvy(スイス)WebCreta Technologies Pvt Ltd(インド)
公開日2020年7月20日2026年4月8日2025年5月26日
評価4.9(41件)5.0(2件)0.0(0件)
無料プランの上限10商品、月500注文、単一拠点1商品、バッチ無制限、拠点数無制限5商品、10注文、単一拠点
最安の有料プラン$24/month$15/month$9.99/month
複数拠点が使える価格$199/month無料プラン$19.99/month
最上位プラン$199/month$15/month$29.99/month
購入者への期限表示$24/month以上リスティングに記載なし$9.99/month以上

Freshlyは商品数と注文数、Batchlyは商品数だけ、Batch ExpiryProは商品数・注文数・拠点数をそれぞれ別の軸で区切っています。この3本を公平に比べられる月額の数字は存在しません。価格順に並べた比較記事が意味を持たないのはそのためです。

実運用で効いてくる唯一の軸は複数拠点対応で、そこが最も開いています。Batchlyは無料、Batch ExpiryProは19.99ドル、Freshlyは199ドルです。

Freshly Batch Inventory

Freshly Batch InventoryのShopify App Storeリスティングページ上部。無料プランありの表示と評価4.9が確認できる

出典: Shopify App Store(Freshly Batch Inventory、2026-09-02時点)

3本の中で最も古く、レビュー数も突出しています。41件で4.9、開発元はカナダ・キッチナーのFreshly Commerce。リスティングにはShopify Flow、Shopify POS、Simple Bundles、Stockyとの連携が記載され、カテゴリーはInventory optimizationです。

プラン構成が独特なので注意して読む価値があります。89ドルのプランはリスティング上で「For stores on Shopify Advanced」、199ドルのプランは「For stores on Shopify Plus」と説明されています。そして複数拠点(multiple fulfillment locations)はこの199ドルのティアにしか出てきません。つまりShopify Growで2拠点を運用しているストアは、自分の契約プランとは違う名前が付いたプランの料金を見ることになります。

無料のEssentialプランは、単一拠点の小規模ストアなら実用になります。10商品でバッチは無制限、月500注文、注文へのバッチ自動割り当て込みです。手動割り当て、バッチのトレーサビリティ、一括インポート、購入者への期限表示は24ドルからです。

Batchly: Lot & Expiry Tracking

Batchly: Lot & Expiry TrackingのShopify App Storeリスティングページ上部。無料プランありの表示とレビュー2件で評価5.0が確認できる

出典: Shopify App Store(Batchly: Lot & Expiry Tracking、2026-09-02時点)

2026年4月8日公開でレビューは2件。実績はまだありません。一方で料金体系はこのカテゴリーで最も明快です。無料プランは1商品に制限される代わりにバッチ数も保管拠点数も無制限、有料プランは商品数の制限を外す15ドルの1本だけ。ティアは2つしかありません。

リスティングから2点。1つ目、FIFOとFEFOの引き当ては「configurable per product, not per store」(ストア単位ではなく商品単位で設定可能)と説明されています。同じカタログで生鮮と常温品を併売しているなら重要です。2つ目、UIは英語・ドイツ語・フランス語・スペイン語に対応しており、これは他の2本にはありません。

Batch ExpiryPro

Batch ExpiryProのShopify App Storeリスティングページ上部。レビュー0件で評価0.0の表示が確認できる

出典: Shopify App Store(Batch ExpiryPro、2026-09-02時点)

無料から29.99ドルまで4ティア。開発元はインド・アーメダバードのWebCreta Technologies。2025年5月26日の公開以来、レビューは0件です。

19.99ドルのStandardプランに、複数拠点対応、手動バッチ割り当て、バッチトレーサビリティ、メタフィールド連携、納品書のカスタマイズ、バッチ単位の値引きがまとめて入っています。Freshlyが89ドルと199ドルの2ティアに分散させている機能群です。

この差はこの記事で最も興味深い数字ですが、当然の但し書きが付きます。App Storeに15か月掲載されてレビューが1件も付いていないのは中立的な事実ではありません。このアプリで実際に回収作業を回したという公開報告は存在しません。

なおこのアプリはInventory optimizationではなくInventory syncカテゴリーに登録されているため、カテゴリーを見ていても他の2本と並びません。

誰も触れていないデータアクセスの差

トレーサビリティは過去への問いです。「ロットA-0713を受け取ったのは誰か」を、1年前の注文についても答える必要があります。

App Storeの各リスティングにあるデータアクセス欄を見ると、3本の要求範囲は同じではありません。

  • Freshly Batch Inventoryは注文について「all order history for the last 60 days」(直近60日分の全注文履歴)と記載され、加えてassigned fulfillment、merchant managed fulfillment、third-party fulfillment、order editsを要求しています。
  • Batchlyは「all order history」(全注文履歴)です。
  • Batch ExpiryProのリスティングにはデータアクセス欄そのものがありません。

これはあくまで各アプリがShopifyのデータに対して付与されるスコープであって、アプリ自身のデータベースに何を保持しているかとは別です。割り当て時点でバッチを記録しているアプリなら、2年前の注文を読み直す必要はありません。ただし回収対応力で選ぶなら、この差は推測で埋めずに各ベンダーに直接確認すべき項目です。

3本ともBuilt for Shopifyバッジは付いていません。

米国の規制まわり(正確に書きます)

FDAのFood Traceability Listに載っている品目を扱っているなら、これは在庫管理の作法の話ではなくなります。

FDAの「FSMA Final Rule on Requirements for Additional Traceability Records for Certain Foods」のページを2026年9月2日に確認したところ、今後の対応を説明する箇所に次の一文が残っています。

The compliance date is January 20, 2026. Start working on this today!(遵守期日は2026年1月20日です。今日から着手してください)

同じページには、Continuing Appropriations, Agriculture, Legislative Branch, Military Construction and Veterans Affairs, and Extensions Act of 2026における議会の指示への言及もあります。2025年から2026年にかけての報道では、30か月の延長により実務上の期日が2028年7月20日になるとされています。どの期日が自社に適用されるかを断定できる立場に私たちはありませんし、Shopifyアプリにもできません。それは月15ドルのサブスクリプションではなく弁護士に確認する話です。

はっきりしているのは要求の形です。Critical Tracking EventsとKey Data Elementsを、サプライチェーンを通じて記録し、取り出せる状態にしておくこと。Shopifyの中でロットを注文に割り当てるアプリは、この鎖の1つの環をカバーします。仕入先が何を記録したかはカバーしませんし、インストールしただけでコンプライアンス体制にはなりません。

Freshlyのリスティングのプロモーション画像には、FDAのFood Safety Traceability Challengeの受賞をうたう記載があります。この主張を私たちは独自に検証できていません。マーケティング上のバッジを規制当局の承認と受け取るべきではありません。

選び方

単一拠点で、期限管理が必要な商品が1〜2 SKU。Batchlyの無料プランが1商品・バッチ無制限・拠点無制限をカバーします。足りなくなっても15ドルはこのカテゴリー最安の商品数無制限ティアです。引き受けるリスクは、公開4か月・レビュー2件という実績の薄さです。

単一拠点でCPGや食品を扱い、月500注文以下、POSも使っている。Freshlyの無料Essentialプランで10商品と自動割り当てが使えます。3本の中でリスティングにPOSとShopify Flowの連携が明記されているのはFreshlyだけです。トレーサビリティと購入者向けの期限表示が必要になったら月24ドルを見込んでおきます。

複数拠点を運用していて、コストが判断軸。100ドル未満で複数拠点のバッチ管理が手に入るのはBatch ExpiryProの19.99ドルだけです。契約前に厳しく試してください。無料トライアル中に回収のシミュレーションを走らせ、対象注文が実際に返ってくるかを確認します。

複数拠点で、実績のあるベンダーが必要。Freshlyの199ドルです。ただしそのティアの説明と自社のShopifyプランが噛み合っているかを先に確認してください。

FSMA 204の対象事業者。トレーサビリティの出力で選びます。あるロットについて、影響を受けた注文と顧客を、規制当局に提出できる形で書き出せるか。そのうえで、体制の残りはShopifyの外で整えます。

どれにも当てはまらず、商品ページに期限を出したいだけ。メタフィールドで無料でできます。使わない引き当てロジックを買う必要はありません。

確認できなかったこと

3本のいずれについても、Shopifyに要求している注文履歴の範囲を超えてバッチと注文の対応を保持し続けるかどうか。BatchlyのShopify POS対応(リスティングにはShopify AdminとBundles.appのみ記載)。Batch ExpiryProのShopifyデータアクセス範囲(リスティングに欄がありません)。そしてFreshlyのプロモーション画像にあるFood Safety Traceability Challengeの記載(FDA側の情報で確認できませんでした)。

調査日は2026年9月2日です。料金はすべて米国(英語)版Shopify App Storeのリスティング記載で、USD建てです。

参考・出典

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