この記事でわかること
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「ポイント制度を始めたい」という相談で最初に出てくる質問は、たいてい「月いくらかかりますか」です。ところがShopifyのロイヤルティアプリは、この質問に月額だけでは答えられない構造になっています。
App Storeで確認できる主要アプリは、いずれも月間注文数でプランが区切られています。月200件まで無料、500件まで15ドル、1,000件を超えると79ドル、2,500件で199ドル。そして超過分は100件ごとの従量課金になります。つまりポイント制度のコストは、ポイントを使う人の数ではなく、ストア全体の注文数に連動して上がっていきます。
この記事では、Shopify標準のストアクレジットでどこまでできるかを確定させたうえで、ロイヤルティアプリ4本を同じ軸で並べます。調査日は2026年8月31日です。
先に結論
- 返品対応やお詫びの原資を配りたいだけ → アプリは不要。標準のストアクレジットで足りる
- 月の注文が200件以下 → GrowaveまたはRivoの無料プランが選択肢。ただし機能はかなり絞られる
- 月500件前後で、日本語の管理画面が必要 → Smile.ioまたはGrowaveの15ドルプラン
- VIPランク(会員ランク)を運用したい → 各社とも上位プランの機能。ここで一気に月199ドル級になる
- 注文が急増する見込みがある → Rivoの月額上限499ドルという設計が効いてくる
- Shopify Plusでチェックアウト画面にポイントを出したい → Smile.ioはGrowthプラン、Growaveは$499のPLUSプラン
2026年8月31日時点で、Shopify App Storeの「ロイヤリティとリワード」カテゴリーには404個のアプリが登録されています。以下は、その中でレビュー件数の多い4本です。
Shopify標準でできること:ストアクレジット
Shopifyにポイントプログラムの機能はありません。ただしストアクレジットは標準機能として搭載されており、ヘルプセンターによれば初期状態で有効になっています。管理画面から顧客に金額を発行すると、顧客アカウントまたはShop Payでログインした状態のチェックアウトで、支払い方法として使えます。
ヘルプセンターは、ストアクレジットの用途として次を挙げています。
- 好意の表明として
- 顧客維持の手段として
- マーケティングキャンペーンの一部として
- ロイヤルティや紹介プログラムの報酬・インセンティブとして
Shopify自身が「ロイヤルティプログラムの報酬」を用途に挙げているわけです。ではこれで十分かというと、ヘルプセンターに並ぶ制約を読むと判断が変わります。
2025年5月12日以降に作成されたストアでは、ストアクレジットで支払われた金額に第三者取引手数料がかかります。 Shopify Paymentsを有効にしたShopify Plusプランのストアはこの手数料が免除されます。つまり2025年5月以降に開店した非Plusストアがストアクレジットを大量に配ると、その利用分に手数料が乗ります。
部分利用ができません。 ヘルプセンターには「Only the full store credit amount can be applied as a payment method.(支払い方法として適用できるのは残高全額のみ)」とあり、顧客が「今回は500円分だけ使う」という選び方はできません。ポイントを少しずつ使わせる運用とは相性が悪い仕様です。
そのほかの制約も整理しておきます。
- 1顧客アカウントに発行できるのは15,000 USD未満
- レガシー顧客アカウントでは利用できない(新しい顧客アカウントへの移行が必要)
- ドラフト注文・編集済み注文には適用できない。管理画面で作った注文で使わせるにはチェックアウトリンクを送る必要がある
- 定期購入の初回購入には使えるが、継続請求には使えない
- 利用できる販売チャネルはオンラインストア、Shopify POS、Shopの3つのみ
- ギフトカードと違い、ストア全体の既定の有効期限設定がない。有効期限は発行のたびに個別に指定する
一方で、ストアクレジットの残高や有効期限にもとづく顧客セグメントの作成、財務レポートでの「ストアクレジット取引」「未使用のストアクレジット残高」の確認は標準でできます。
判断の分かれ目はこうなります。 「返品の返金先」「お詫びの原資」「単発キャンペーンの配布」ならストアクレジットで完結します。「購入するたびに自動でポイントが貯まり、顧客が残高を見て、好きなタイミングで一部を使う」という体験を作りたいなら、アプリが必要です。
4本の課金軸を同じ表に並べる
すべて2026年8月31日時点のShopify App Storeの表示です。
| Smile ポイント・ロイヤルティプログラム | Growave: Loyalty & Wishlist | Rivo: Loyalty Program, Rewards | LoyaltyLion Loyalty Program | |
|---|---|---|---|---|
| 開発元 | Smile.io | Growave | Rivo | LoyaltyLion |
| 評価(件数) | 4.9(4,230件) | 4.8(約1,170件) | 4.8(1,383件) | 4.7(479件) |
| Built for Shopify | 取得済み(2026 Build Award受賞) | 取得済み | 取得済み | 記載なし |
| 無料プラン | あり(月200件) | あり(月200件) | あり(月200件) | 無料インストール(月400件) |
| 第2プラン | $15/月(月500件) | $15/月(最大500件、超過100件ごと$20) | $15/月(月500件) | $199/月 |
| 第3プラン | $79/月(月1,000件) | $199/月(最大1,500件、超過100件ごと$15) | $49/月(400件込み、超過100件ごと$20、月額上限$499) | 月500件超はカスタム見積もり |
| 第4プラン | $199/月(月2,500件、超過100件ごと$20) | $499/月(最大3,000件、超過100件ごと$10) | $499/月(月2,500件) | — |
| 管理画面の日本語 | 対応(9言語) | 対応(16言語) | 英語のみ | 英語のみ |
| VIPランク | Growthプラン($199) | GROWTHプラン($199) | Scaleプラン($49) | Classicプラン($199) |
| ポイント有効期限 | Growthプラン | GROWTHプラン | Scaleプラン | 確認できず |
| 紹介プログラム | 無料プランから | ENTRYプラン($15) | Scaleプラン($49) | 確認できず |
| チェックアウト拡張 | Growthプラン(Shopify Plus) | PLUSプラン($499) | Plusプラン($499) | 記載あり(プラン不明) |
| Shopify POS | 無料プランから | ENTRYプラン | Essentialプラン | 記載あり |
| Shopify Flow | Essentialプラン($15) | ENTRYプラン | 確認できず | 記載あり |
表から読み取れること
第一に、「月額いくら」で比較すると判断を誤ります。 Smile.io、Growave、Rivoはいずれも第2プランが15ドルで横並びに見えますが、そこに含まれる注文数はSmile.ioとRivoが月500件、Growaveが最大500件で超過分は100件ごとに20ドルです。月700件の注文があるストアなら、Growaveでは15ドル + 40ドル = 55ドルになります。一方Smile.ioは500件を超えた時点で次の79ドルプランへの移行が必要になります。同じ「15ドル」でも到達点が違います。
第二に、VIPランクの位置が各社バラバラです。 会員ランク制度は日本のEC事業者からの要望が多い機能ですが、Smile.io、Growave、LoyaltyLionはいずれも月199ドルのプランに置いています。Rivoだけが49ドルのScaleプランに含めており、ここが最大の価格差です。ただしRivoのScaleプランに含まれる注文数は400件で、Essentialプラン(15ドル・500件)より少ない点に注意してください。Scaleは「注文数を増やすプラン」ではなく「機能を増やすプラン」という位置づけです。
第三に、日本語で運用したいなら候補は2本に絞られます。 RivoとLoyaltyLionはApp Storeのリスティングに「このアプリは日本語に翻訳されていません」と明記されており、対応言語は英語のみです。Smile.ioは英語・フランス語・日本語を含む9言語、Growaveは日本語を含む16言語に対応しています。ただしこれは管理画面と提供テキストの話であり、日本語サポート窓口の有無とは別問題です。
第四に、Rivoの月額上限499ドルという設計は他社にありません。 Scaleプランの説明に「注文量にかかわらず上限は月額499ドル」と記載されています。他社は超過分の従量課金に上限の記載がないため、注文が大きく伸びるフェーズでは総額の予測可能性が変わってきます。
各アプリの性格
Smile ポイント・ロイヤルティプログラム(Smile.io)
どの課題に向くか。 レビュー件数4,230件はこのカテゴリーで最多で、2026 Build Awardの受賞アプリでもあります。日本語の管理画面があり、無料プランからShopify POSと紹介プログラムが使える点で、最初の1本として検討しやすい構成です。
注意点。 チェックアウト画面でのポイント利用はGrowthプラン(199ドル)に含まれ、かつShopify Plusが前提と記載されています。VIPランクとポイント有効期限も同じGrowthプランです。無料プランや15ドルプランの段階では、ポイントの見せ場は商品ページと専用ページに限られます。
連携。 Klaviyo、Judge.me、Gorgias、Loox、Mailchimp、Rechargeなどが挙げられており、Shopify Flow、顧客アカウント、Shopify POS、チェックアウトへの対応も記載されています。連携数はプランで制限され、Essentialが1つ、Standardが2つ、Growthで無制限です。
Growave: Loyalty & Wishlist
どの課題に向くか。 ロイヤルティ単体のアプリではなく、レビュー、ウィッシュリスト、UGCまで含むリテンション基盤です。無料プランで「3つのアプリを1箇所で無料利用」と記載があり、月200件までの注文でロイヤルティポイント、ウィッシュリスト、商品レビューが使えます。レビューアプリやウィッシュリストアプリを別途契約している場合、合算コストで比較すると評価が変わる可能性があります。
注意点。 無料プランにはGrowaveのブランディングが表示されます。またウィッシュリストの再入荷通知メールやInstagramのUGC活用は199ドルのGROWTHプランからです。超過課金の単価がプランごとに下がる設計(ENTRY $20 → GROWTH $15 → PLUS $10)になっている点も、他社と異なります。
Rivo: Loyalty Program, Rewards
どの課題に向くか。 VIPランク、ポイント有効期限、紹介プログラムを49ドルで揃えられる点が最大の特徴です。加えてScaleプランの月額上限499ドルという記載があり、注文数が読めないストアにとって上振れリスクを抑えられます。
注意点。 英語のみで、日本語には翻訳されていません。掲載ページにも「この開発者は日本語での直接的なサポートを提供していません」と明記されており、日本語で完結させたいストアには向きません。また49ドルのScaleプランに含まれる注文数は400件で、15ドルのEssentialプラン(500件)より少なくなっています。連携先としてKlaviyo、Gorgias、Postscript、Attentiveが挙がっており、英語圏のDTCスタックを前提とした構成です。
LoyaltyLion Loyalty Program
どの課題に向くか。 無料プランの注文枠が月400件と、4本の中で最も広く設定されています。ここまでは無料で、それを超えると199ドルのClassicプランという二段構成です。
注意点。 15ドルや49ドルにあたる中間プランがありません。月500件を超える場合は「Advanced または Plus プランのカスタム見積もりについてチャットで問い合わせ」と案内されており、価格がリスティング上で確定しません。またレビュー件数は479件と4本の中で最も少なく、App Storeの「Built for Shopify」表示も確認できませんでした。英語のみで日本語には翻訳されていません。
ケース別の選び方
まだポイント制度を試す段階
Growave(月200件)またはRivo(月200件)の無料プラン、あるいはLoyaltyLion(月400件)の無料インストールから始めるのが低コストです。ただしいずれも上位プランへ移行する前提の設計になっているため、「無料で運用し続ける」計画は立てにくくなっています。
日本語の管理画面が必須
Smile.ioかGrowaveの2択です。この時点でRivoとLoyaltyLionは候補から外れます。
会員ランク制度を早く始めたい
Rivoの49ドルプランが最も安価です。ただし日本語非対応であることと、含まれる注文数が400件である点を踏まえて判断してください。日本語が必要なら、Smile.ioかGrowaveの199ドルプランになります。
レビューやウィッシュリストも導入したい
Growaveが有力です。別々のアプリを契約した場合の合計金額と比較してください。
注文数が急増する予定がある
Rivoの月額上限499ドルという記載が効きます。他社は超過分の従量課金に上限の記載がありません。
導入前チェックリスト
- ストアクレジットで代替できないか。返金・お詫び用途なら標準機能で足りる
- 2025年5月12日以降に作成したストアか。ストアクレジット利用分の第三者取引手数料の対象になる
- 現在の月間注文数と、12か月後の見込み。無料枠と第2プランの境界を越えるのはいつか
- VIPランクが必須要件か。必須なら価格帯が一段上がる
- 管理画面と顧客向け表示のどちらに日本語が必要か
- 超過分の従量課金に上限があるか
- チェックアウト画面でのポイント利用が必要か。Shopify Plusが前提になる場合がある
- ポイント残高のデータをアンインストール時にエクスポートできるか
まとめ
Shopifyのロイヤルティアプリを比較するときに最も重要なのは、機能一覧ではなく「自社の月間注文数がどのプランの境界にあるか」です。同じ15ドルでも含まれる注文数が違い、超過後の単価も上限の有無も各社で異なります。
判断の順番はこうなります。
- ストアクレジットで済む用途かを先に確認する。済むならアプリは不要
- 直近12か月の月間注文数の推移から、越える境界を特定する
- VIPランクと日本語対応の2点を必須要件として設定し、候補を2本に絞る
- 無料プランまたは14日間の無料体験で、実際の注文データを流して超過課金を試算する
料金と機能はすべて2026年8月31日時点のShopify App Storeの表示にもとづきます。ロイヤルティアプリは料金改定が比較的多い領域のため、導入前に最新の表示を確認してください。
Shopifyの管理画面側の住所検証は、全プランで常時有効、無料で、米国に対応している。チェックアウト時の検証もトグル1つで有効にできる。そのうえで公式ドキュメントは、サードパーティの住所検証アプリを同時に使うと提案が競合してチェックアウトのコンバージョンを下げうるため、どちらか一方にせよと明記している。ここでカテゴリの見え方が変わる。アプリは配送可能性の判定を二重化するためのものではなく、Shopifyの検証がやらない「私書箱の拒否」「部屋番号の必須化」といったポリシー強制のためのものだ。2026-09-02時点で米国App Storeの実在アプリ4本を確認した。月額4.99ドルの定額、1注文あたり0.04ドル、そしてShopifyの請求とは別に契約が必要なものまで幅がある。