この記事でわかること
この記事の目次Contents閉じる開く
「3個以上で10%オフ」は最も古い販促手法のひとつで、多くのマーチャントがShopify管理画面でまず探す機能でもあります。そしてたいてい混乱して終わります。Shopifyの答えが二つに割れているからです。ネイティブのvolume pricingは確かに存在します。ただし、おそらくあなたのストアには適用されません。
この記事では、Shopify公式ドキュメントをもとにネイティブ機能の境界線を確定し、そのうえで米国App Storeの実在アプリ5本の料金を確認します。最も重要な発見は各アプリの月額ではなく、各社が「何を数えて」課金プランを決めているかです。
調査日は2026年9月2日。料金はすべて英語版App Storeに掲載されているUSD表記です。
先に結論
- Shopifyのネイティブvolume pricingはB2B catalogの中にしか存在しません。companyまたはcompany locationに紐づいた顧客だけが対象で、通常のDTC顧客には一切表示されません。
- 価格帯は1商品につき最大10段階まで設定でき、各バリアントに個別に適用されます。青い帽子10個とグレー10個を買った顧客は、カートに20個入っていても何の割引も受けられません。
- volume pricingを適用すると、その商品の価格は固定されます。catalogに設定した全体調整の割引はその商品に効かなくなります。
- catalog数はプランで上限があります。Basic / Grow / Advancedは全B2Bマーケット合計で3件まで。Shopify Plusは無制限です。
- DTC向けで最も近いネイティブ機能はBuy X get Yですが、公式ドキュメントは割引対象の「get」商品がカートへ自動追加されることはないと明記しています。顧客が自分で入れる必要があります。
- 確認した5アプリは、互いに互換性のない3つの分母で課金しています。ストア全体の注文件数、アプリが自分の功績と計算した売上、そして定額です。
- この分母が順位を逆転させます。月40件のストアはあるアプリで0ドル、別のアプリで29.99ドル。月1,200件のストアではその逆になります。
ネイティブで何ができるか
volume pricingはB2B catalogの機能
Shopifyのvolume pricingは Markets → Catalogs の中、B2B catalogの内側にあります。設定は「Products and pricing → Manage → Volume pricing」から、商品単位またはバリアント単位で行います。
公式ドキュメントに掲載されている設定例は次のような形です。
| 設定 | 数量 | 単価 |
|---|---|---|
| Minimum | 1 | $20 USD |
| Price break 1 | 20 | $18.50 USD |
| Price break 2 | 50 | $17.75 USD |
| Price break 3 | 100 | $16 USD |
価格帯は1商品につき最大10段階まで追加できます。
機能としては完成度が高いのですが、対象は卸売です。catalogに紐づき、catalogはcompanyとcompany locationへ割り当てられます。購入者がB2Bのcompanyプロフィールに属していなければ、この仕組みは一切描画されません。
見落とされやすいのは「バリアントごと」の判定
ここがこの記事で最も重要な部分です。帽子の例文の中に埋もれているため、読み飛ばされやすい箇所でもあります。
公式ドキュメントは、価格帯の適用条件として顧客が各バリアントごとに必要数量を満たす必要があると記載しています。例として、帽子に青とグレーのバリアントがある場合、20個の価格帯を得るには青を20個注文する必要があるとしています。quantity rulesも同じ規則で、公式は「グレー5個と青5個を組み合わせて10個の増分を満たすことはできない」と明記しています。
単一SKUをケース単位で買う卸売アカウントなら問題ありません。しかし消費者向けの「このシャツを3枚、サイズは自由」といった施策には致命的です。アパレル、フレーバー違いのサプリメント、香り違いのキャンドル。いずれも顧客がバリアントを混ぜて数量に到達することが施策の前提です。ネイティブのvolume pricingは混在カートを合算しません。
設計前に知っておくべき制約が2つ
volume pricingを適用すると、公式ドキュメントによればその商品の価格は固定され、catalogに設定した全体調整の割引はその商品に適用されなくなります。「全商品を定価の30%オフ、売れ筋はさらに深い価格帯」という設計を考えていた場合、想定どおりには重なりません。
また価格帯の数量は、最低注文数量より大きく、かつquantity rulesで設定した増分の倍数である必要があります。12個単位・最低24個で販売しているなら、30という価格帯は設定できません。
最低注文数量を設定した場合、公式は商品ページにその数量を表示するようテーマ側で対応せよと案内しています。強制自体はサーバー側で行われますが、顧客への伝達は自分の仕事です。
catalog数のプラン上限
Basic / Grow / Advancedでは、全B2Bマーケット合計で有効なcatalogを3件まで割り当てられます。Shopify Plusは無制限に加え、companyとlocationへの直接割り当てが可能です。「顧客ランクごとに1 catalog」という設計を考えていた場合、Plus以外では3つが天井になります。
DTCに残されたBuy X get Y
B2Bでないストアフロント向けには、ネイティブの割引エンジンがBuy X get Yを提供しています。ディスカウントコードでも自動割引でも作成でき、最低数量または最低購入金額を条件にできます。
公式が挙げている考慮事項のうち、数量割引の代替になり得るかを決めるのは次の2点です。
- 顧客はすべての商品を自分でカートに追加する必要があります。割引対象や無料の「get」商品がカートへ自動追加されることはありません。
- POS Liteの店舗では、Buy X get Yはオンラインストアのチェックアウトでのみ利用できます。
段階価格の表示という用途では、1点目が決定的です。数量割引のUIは「3個で45ドル、5個で70ドル」を商品ページで見せて顧客に選ばせるから機能します。Buy X get Yには商品ページ側の面がなく、顧客が勘で正しく組み立てたカートを事後的に評価するだけです。
なお、一部のPlusマーチャントがカートレベルの段階価格に使っていたShopify Scriptsは2025年8月28日にend of lifeを迎えました。公式の案内はShopify Functionsへの移行です。
判定
B2B companyへの卸売で、各取引先が単一バリアントをまとめ買いするなら、ネイティブのvolume pricingで足ります。無料です。バリアント混在の段階価格、商品ページ上の段階セレクター、あるいは一般消費者向けの施策が必要なら、アプリが要ります。
実在アプリ5本の料金(2026年9月2日時点)
| アプリ | 開発元 | Built for Shopify | 評価(件数) | 最低料金 | 課金の分母 |
|---|---|---|---|---|---|
| Qikify Volume Discounts Bundle | Qikify | あり | 5.0(75) | 無料 | なし(無料プランのみ) |
| Volume Discount Mojo | Eushopa | なし | 5.0(4) | $4.99/月 | 定額。有効オファー12件まで |
| Dealeasy: Volume Discounts App | Logbase | あり | 4.9(598) | 無料インストール | ストア全体の月間注文件数 |
| パンパーバンドルの数量割引 | Profit Pumper Bundle | あり | 4.9(3,357) | 無料 | アプリが自分の功績とした追加売上 |
| Hulk Bundles Quantity Breaks | HulkApps | あり | 4.6(614) | $12/月 | 定額(リスティングに「Shopifyプランに基づく」の注記) |
Dealeasy: Volume Discounts App

出典: Shopify App Store(Dealeasy: Volume Discounts App、2026-09-02時点)
LogbaseのアプリはBuilt for Shopifyバッジを持ち、この5本の中ではパンパーに次ぐレビュー数です。プランは4段階で、無料インストール(月50件まで)、$9(500件まで)、$19(1,000件まで)、$29(1,000件超)。有料プランには30日間の無料体験が付きます。
分母はすべてのプランに明記されています。ストアの合計注文件数が対象です。割引が使われた注文ではなく、ストアが受けた全注文です。月1,100件のストアは、そのうち9件しか数量割引に触れていなくても$29のプランになります。
これは両方向に効きます。月40件・単価400ドルのような少件数・高単価のストアは、volume経由の売上がどれだけ大きくても無料のままです。
パンパーバンドルの数量割引

出典: Shopify App Store(パンパーバンドルの数量割引、2026-09-02時点)
このアプリはレビュー3,357件と、この比較で最も厚い実績を持ち、Built for Shopifyバッジも取得しています。全プランに「Unlimited Bundles & Quantity Breaks」が含まれるため、上位プランで買うのは機能ではありません。
変わるのは帰属売上の上限です。無料プランは$300まで。Starterは$9.99/月(年額$94.68)で、アプリが生み出したとする追加売上$1,000まで。Growthは$29.99/月(年額$269.88)で$5,000までです。
Dealeasyのモデルとちょうど逆です。総注文件数は関係ありません。関係するのは、アプリが自社オファーの功績として計上した増分売上であり、その数値を計算するのはアプリ自身です。
Qikify Volume Discounts Bundle

出典: Shopify App Store(Qikify Volume Discounts Bundle、2026-09-02時点)
Qikifyのリスティングに表示される価格は1つ、Freeだけです。Built for Shopifyバッジがあり、レビュー75件で評価5.0。リスティングには「native to Shopify discount」な数量割引、mix-and-matchのマルチバイ、サブスクリプションとの併用が記載されています。
ただしレビュー75件は、パンパーの3,357件やDealeasyの598件と比べると根拠としてかなり薄いという点が、ここでの正直なトレードオフです。公表されている制限があるわけではありません。
Hulk Bundles Quantity Breaks

出典: Shopify App Store(Hulk Bundles Quantity Breaks、2026-09-02時点)
HulkAppsの料金はBasic $12/月(年額$120)、Grow $27.90/月(年額$250)、Advanced $40/月(年額$400)。7日間の無料体験があり、無料プランはパートナー開発ストア専用です。有料3プランはいずれも同じ25種類の割引タイプを掲載しており、リスティングには「* Based on Shopify Plan」という注記が付いています。つまり所属プランは利用量ではなくShopifyプランに連動すると読めます。
またこの5本の中で唯一、レビュー分布に明確なばらつきがあります。614件のうち5つ星520件に対し1つ星55件。この分布は平均値にならさず、インストール前に中身を読む価値があります。
Volume Discount Mojo

出典: Shopify App Store(Volume Discount Mojo、2026-09-02時点)
この中で最もシンプルな料金体系です。$4.99/月の1プランのみ、有効オファーは12件まで、14日間の無料体験付き。リスティングには、商品ページとカートで数量割引価格を訴求し、カートとチェックアウトの両方で自動的に割引を適用すると記載されています。
ただしレビュー4件から一般化はできません。米国のあるストアのレビューが1件、チェックアウト表示が読みやすく、volume割引とクーポンコードのうち購入者に有利な方を適用すると述べていますが、これは1アカウントの記述であり傾向ではありません。
決めるのは表示価格ではなく分母
同じ5アプリに2つのストアを通すと、順位が入れ替わります。
ストアA — 月40件、平均単価400ドル、バンドル利用が活発(帰属売上$2,000/月)
- Dealeasy: $0(50件未満)
- パンパー: $29.99(Starterの$1,000上限を超過)
- Qikify: $0
- Mojo: $4.99
- Hulk: $12〜
ストアB — 月1,200件、平均単価50ドル、バンドル利用は限定的(帰属売上$900/月)
- Dealeasy: $29(1,000件超、利用状況に関係なく)
- パンパー: $9.99($1,000未満)
- Qikify: $0
- Mojo: $4.99
- Hulk: $12〜
同じ2アプリで結論が正反対になります。Dealeasyはバンドル売上が最も大きいストアで無料、最も小さいストアで$29です。どちらのベンダーも不当ではありません。数えている対象が違うだけで、その分母は「$9から」「$9.99から」と並べた比較表からは一切見えません。
インストール前に、自分の2つの数字を出してください。月間注文件数と、数量割引が関わりそうな月間売上のおおよその規模。この2つがアプリを決めます。
選び方
- B2B companyへの卸売で、単一バリアントのまとめ買いが中心。 B2B catalogのネイティブvolume pricingで足ります。無料です。Plus以外では3 catalogの上限に注意してください。
- 一般顧客向けにバリアント混在の段階価格をやりたい(シャツ3枚どれでも、フレーバー5個どれでも)。ネイティブでは不可能です。アプリが必要です。
- まず無料で仕組みを試したい。 Qikifyは完全無料、Dealeasyは月50件未満まで無料、パンパーは帰属売上$300未満まで無料。どの「無料」が本当に無料かは、あなたのストアの形で決まります。
- 注文件数が多く、バンドル寄与が小さい。 注文件数課金は避けてください。帰属売上課金か定額の方が安くなります。
- 注文件数が少なく、バンドル寄与が大きい。 逆です。注文件数課金が味方になります。
- 1年先まで請求額を読みたい。 Mojoの$4.99やHulkAppsの$12のような定額なら不確実性は消えます。代わりにMojoは12オファーの上限があり、レビュー実績もかなり薄い点は理解しておく必要があります。
最後に、費用ゼロで確認できることがひとつ。バリアント混在の合算が本当に必要かを確かめてください。走らせたい数量割引がすべて「この1 SKUを6個」で、かつB2B companyの設定が済んでいるなら、ここに挙げたアプリはどれも不要かもしれません。
参考・出典
- Catalogs and pricing in B2B — Shopify Help Center
- Setting up quantity rules and volume pricing in B2B — Shopify Help Center
- Buy X get Y discounts — Shopify Help Center
- Discounts — Shopify Help Center
- Dealeasy: Volume Discounts App、Qikify Volume Discounts Bundle、パンパーバンドルの数量割引、Hulk Bundles Quantity Breaks、Volume Discount MojoのShopify App Storeリスティング(いずれも2026-09-02取得)
Shopifyの管理画面側の住所検証は、全プランで常時有効、無料で、米国に対応している。チェックアウト時の検証もトグル1つで有効にできる。そのうえで公式ドキュメントは、サードパーティの住所検証アプリを同時に使うと提案が競合してチェックアウトのコンバージョンを下げうるため、どちらか一方にせよと明記している。ここでカテゴリの見え方が変わる。アプリは配送可能性の判定を二重化するためのものではなく、Shopifyの検証がやらない「私書箱の拒否」「部屋番号の必須化」といったポリシー強制のためのものだ。2026-09-02時点で米国App Storeの実在アプリ4本を確認した。月額4.99ドルの定額、1注文あたり0.04ドル、そしてShopifyの請求とは別に契約が必要なものまで幅がある。