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「Shopifyの管理画面でAIにアプリを作らせられる」。Sidekickのアプリ生成機能は、そう説明されることが多い機能です。実際、Shopifyヘルプセンターには、売れ行きから発注すべき商品を推奨するアプリや、割引付きチェックアウトリンクとQRコードを生成するアプリの例が挙げられています。
ただしこの機能には、Sidekick全体とは別のプラン要件が設定されています。ヘルプセンターの該当ページは、本文より前に注意書きから始まります。
Generating apps with Sidekick is available only to stores on the Grow plan, Advanced plan, and Shopify Plus plan.
Basicプランは対象外です。そしてプラン要件を満たしたとしても、生成されたアプリが触れる範囲は思ったより狭く、届かない領域が3つあります。
この記事では、Sidekickで何ができて何ができないのかをShopifyヘルプセンターの記載だけを根拠に整理し、そのうえで自動化アプリ2本との棲み分けを引き直します。調査日は2026年9月1日です。
先に結論
Basicプランのストアは、アプリ生成を計算に入れないでください。Sidekickの機能のうち、ヘルプセンターにプラン要件が明記されているのはアプリ生成だけで、そこにBasicは含まれていません。
ストアフロントやチェックアウトを触りたいなら、Sidekickの生成アプリでは届きません。生成アプリはShopify管理画面の中でのみ動作し、顧客からは見えません。テーマ、チェックアウト、顧客アカウントアプリのデータや機能にはアクセスできないと明記されています。
カスタマーサポートを自動化したいなら、Sidekickは対象外です。ヘルプセンターに「顧客と話したり、代わりにカスタマーサポートの会話を処理することはできない」と書かれています。
外部サービスとデータを往復させたいなら、Sidekickの生成アプリではなく自動化アプリです。生成アプリがアクセスできるのは自ストアのAdmin APIだけです。
繰り返す集計や定型のワークフローなら、Sidekickで足ります。プロンプトをスキルとして最大25個まで保存でき、ショートカットで呼び出せます。
Sidekickでできること
Sidekickは、Shopify管理画面のどのページからでも呼び出せるAIアシスタントです。チャットで質問やタスクを依頼するモードと、管理画面ホームのSidekick Pulseで推奨事項が提示されるモードの2つがあります。
ヘルプセンターに記載されている生成機能を並べると、範囲は広いことが分かります。
- 顧客セグメント:自然言語でカスタムセグメントを作成
- 割引:商品・注文の金額オフ、送料無料の割引コードと自動割引を作成
- 画像:テキストプロンプトからバナーやマーケティング素材、ブログ記事の挿絵を生成
- メール:Shopify Messagingのキャンペーン本文、フォント・色・ボタンなどのデザイン編集
- テキスト:管理画面の任意のフィールドの入力、ブログ記事、商品説明
- メタフィールド・メタオブジェクト:値の更新とエントリの更新
- レポート:ShopifyQLクエリの生成とカスタムデータ探索の作成
- Shopify Flow:ワークフローの新規作成と既存ワークフローの更新
このうちレポート生成とFlowワークフロー生成は、これまで手作業やドキュメントの読み込みが必要だった領域です。「過去60日間のカナダ顧客の合計売上を見せて」といった依頼が、そのままShopifyQLのクエリになります。
長いタスクについては、チャットを閉じたり別のページに移動してもバックグラウンドで処理が継続し、確認の準備ができると通知される、とも書かれています。
プロンプトは25個まで保存できる
同じ依頼を繰り返す場合、プロンプトを「スキル」として保存できます。ヘルプセンターには保存できる上限が明記されています。
Create and save up to 25 prompts as skills in Sidekick to automate recurring tasks.
保存したスキルはショートカットコマンドで呼び出せます。さらに共有用URLをコピーして、他のマーチャントに渡すこともできます。
メモリの保持期間
Sidekickは過去の会話と管理画面での最近の操作を参照します。保持期間はヘルプセンターに具体的な数値で書かれています。
- 過去の会話:約3か月
- 管理画面での最近のアクティビティ:約12時間
12時間より前の操作は参照されません。またテーマエディタでのSidekickとの会話はメモリに追加されないため、テーマエディタで話した内容を通常のチャットで続けるには、詳細をもう一度書く必要があります。
会話単位でメモリをオフにすることもできますが、注意点があります。オフにした会話では、同じ会話の中で再度オンに戻せません。メモリを有効にした状態でやり直すには、新しい会話を始める必要があります。
アプリ生成のプラン要件と制約
ここからが、Sidekickのなかで最も条件が多い機能です。
対象はGrow・Advanced・Plus
ヘルプセンターの「Generating apps with Sidekick」ページには、冒頭にプラン要件のブロックが置かれています。対象はGrowプラン、Advancedプラン、Shopify Plusプランのみで、Basicプランは含まれていません。
Sidekickのヘルプセンターのうち、プラン要件のブロックが置かれているのはこのページだけです。他の機能ページには同様の記載がありません。「Sidekickが使える=アプリ生成も使える」ではない点に注意が必要です。なお、プランごとの機能一覧ページ(Basic plan / Features on all plans)には2026年9月1日時点でSidekickの記載がないため、アプリ生成以外の機能のプラン別可否は公式情報では確認できませんでした。
権限とレート制限
アプリを生成・編集するスタッフには、App development > Develop の権限が必要です。生成したアプリはストアレベルで共有されます。
また、生成には時間単位と週単位の上限が設定されています。時間単位の上限は1時間ごと、週単位の上限は7日ごとにリセットされ、複雑なアプリほど上限の消費が大きくなると記載されています。上限に近づくとSidekickが通知します。具体的な回数はヘルプセンターに記載されていません。
生成アプリが届かない3つの領域
これが最も重要な制約です。
アクセスできるのは自ストアのAdmin APIのみです。ヘルプセンターは対象を列挙しています。注文、商品、顧客、割引、コンテンツ(メタオブジェクト、ファイル、メニュー、ブログ記事)、分析。この6領域の外には出られません。
Shopify管理画面の中でしか動きません。生成アプリは顧客からは見えず、Shopify管理画面の外にある機能やデータ(テーマ、チェックアウト、顧客アカウントアプリなど)にはアクセスできない、と明記されています。ストアフロントに何かを表示する用途では使えません。
デスクトップのウェブブラウザ限定です。アプリ生成はデスクトップのウェブブラウザで管理画面を開いている場合にのみ利用できます。iPhone・Android・タブレットのShopifyアプリでも、モバイルブラウザの管理画面でも使えません。
なおヘルプセンターは、生成アプリが顧客向けデータを変更しうるため、インストール前に十分テストするよう促しています。アプリエディタではバージョンが自動で作成され、以前のバージョンに戻すこともできます。
Sidekick全体の制約
アプリ生成以外にも、Sidekickには明記された制約があります。
- 顧客と話したり、代わりにカスタマーサポートの会話を処理することはできない
- 他のマーチャントの非公開情報やデータを共有することはできない
- 承認なしにストアを変更することはできない(選択肢を提示して承認を求める)
- ストアテーマ内の画像や商品リストの画像を編集することはできない
- モバイルブラウザで管理画面を使っている場合は利用できない(Shopifyアプリを使う)
「AIがストアを運営してくれる」という期待に対して、Shopify自身が引いている線がここです。特に1つめは、AIチャットボットによる接客を検討しているストアにとって決定的です。Sidekickはマーチャント向けのアシスタントであり、顧客向けの窓口ではありません。
自動化アプリが残る条件
Sidekickの範囲が分かると、自動化アプリが必要になる条件も具体的になります。
外部サービスとデータを往復させたい。生成アプリは自ストアのAdmin APIしか触れません。Googleスプレッドシートへの書き出し、Slackへの通知、FTPでのファイル連携、ERPとの同期はいずれも範囲外です。
Basicプランでコードを伴う自動化をしたい。アプリ生成はGrow以上です。
顧客に見える処理をしたい。生成アプリは管理画面内でのみ動作します。
Shopify Flowで表現しきれない条件分岐が必要。SidekickはFlowのワークフローを生成できますが、生成されるのはFlowの機能範囲内のワークフローです。Flowの表現力を超える処理は、Sidekickに頼んでも出てきません。
実行の信頼性とログが必要。生成アプリには時間単位・週単位の生成上限がありますが、実行時の再試行やエラーログについての記載はヘルプセンターにありません。
自動化アプリ2本の比較
Shopify Flowで足りない場合の選択肢として、課金軸の異なる2本を比較します。いずれも2026年9月1日時点のShopify App Storeの表示です。
| Mechanic | MESA: Workflow Automation | |
|---|---|---|
| 開発者 | Lightward | ShopPad Inc. |
| 評価(件数) | 5.0(129) | 5.0(153) |
| Built for Shopify | あり | なし |
| 課金軸 | Shopifyプラン連動 | 月間タスク数 |
| 無料プラン | なし(15日間無料体験) | あり(月50タスク) |
| 料金 | $16/$29/$99/$199 | 無料/$12/$29/$99 |
| 記述方法 | Liquid | 自然言語・ノーコード |
| 主な連携 | Google Sheets/Drive、Slack、Airtable、FTP、Webhooks | 130以上のECアプリ、ChatGPT、Etsy、Google Sheets、Odoo、Salesforce |
| 日本語UI | なし | なし |
比較表から読み取れることは3つあります。
課金軸が根本的に違います。Mechanicは自ストアのShopifyプランに連動した推奨価格で、Basic Shopifyなら$16、Grow Shopifyなら$29、Advanced Shopifyなら$99、Shopify Plusなら$199という設定です。「追加の利用料金なし」と明記されており、実行回数で費用は変わりません。MESAは月間タスク数で、無料50タスク、$12で500、$29で10,000、$99で50,000以上という刻みです。
実行回数が多いほどMechanicが有利になります。月に3万タスク動かすストアはMESAで$99のプロプランが必要ですが、MechanicならGrowプランのストアで$29です。逆に月に数十タスクしか動かさないなら、MESAの無料プランで足ります。
記述方法が違うため、必要なスキルも違います。MechanicはShopifyテーマと同じLiquidで自動化を書きます。テーマを触ったことがある担当者なら学習コストが低い一方、まったくコードに触れない運用だと敷居があります。MESAは自然言語での構築を前面に出しています。
Mechanic
どの課題に向くか:実行回数が多く、Liquidを書ける担当者がいるストア。
主な機能:355種類以上の既成タスク、Liquidによるカスタム自動化、メール、Google(スプレッドシート、ドキュメント、ドライブ)、Slack、Airtable、FTPなどとの連携。Shopify Flowとも連携します。複数ストアへの対応も機能一覧に含まれます。
強み:Built for Shopifyバッジを取得し、レビュー129件で評価5.0です。Lightwardの「Pay what feels good」ポリシーが各プランの説明に記載されており、表示価格は推奨価格という位置づけです。
注意点:恒久的な無料プランはなく、15日間の無料体験のみです。英語のみで、日本語UIはありません。Liquidで書くという前提上、まったくコードを扱わない体制では活用しきれない可能性があります。
料金:2026年9月1日時点で、$16/$29/$99/$199。自ストアのShopifyプランに対応する推奨価格として表示されます。
向いているストア:自動化の実行回数が多く、テーマのLiquidを触れる担当者がいるストア。
MESA: Workflow Automation
どの課題に向くか:外部サービスとの連携が中心で、まず小さく試したいストア。
主な機能:イベントまたはスケジュールでの自動実行、130以上のECアプリとの接続、通知とアラート、一般的なECワークフローのテンプレート、自然言語での自動化構築。ChatGPT、Etsy、Google Sheets、Odoo、Salesforceとの連携が明記されています。
強み:無料プランで月50タスクまで動かせるため、費用をかけずに検証できます。レビュー153件で評価5.0。米国拠点のサポートチームによる対応がレビューで繰り返し言及されています。
注意点:課金軸が月間タスク数のため、対象注文が増えると費用が段階的に上がります。無料50、$12で500、$29で10,000、$99で50,000以上という刻みで、500から10,000のあいだに中間がありません。英語のみです。無料体験は7日間と短めです。
料金:2026年9月1日時点で、無料/$12/$29/$99。年払いで30%割引。
向いているストア:外部サービス連携が主目的で、月間の実行回数が読めるストア。
ケース別の選び方
管理画面での集計・レポートを楽にしたい
Sidekick。ShopifyQLのクエリ生成とカスタムデータ探索の作成が機能一覧にあります。繰り返す集計はスキルとして保存してください(最大25個)。
管理画面用の社内ツールが欲しい
Sidekickのアプリ生成。ただしGrowプラン以上、デスクトップブラウザ限定、Admin APIの6領域のみという条件を満たす用途に限られます。発注推奨、社内タスク管理、顧客検索と割引作成といった例がヘルプセンターに挙げられています。
Basicプランで自動化を進めたい
アプリ生成は使えません。Shopify Flowで組める範囲を先に確認し、それ以上が必要ならMESAの無料プランから試すのが低リスクです。
外部サービスと連携したい
MESAまたはMechanic。実行回数が読めないうちはMESAの無料プラン、回数が多いと分かっているならMechanic。
カスタマーサポートを自動化したい
Sidekickでも今回比較した2本でもありません。Sidekickは顧客対応を代行できないと明記されており、MechanicとMESAはいずれも管理側の自動化ツールです。チャット・ヘルプデスク系のアプリを別途検討することになります。
導入前チェックリスト
- 自ストアのプランはGrow以上か(アプリ生成の可否が決まります)
- 作りたいものは管理画面の中で完結するか、顧客に見える必要があるか
- 触りたいデータはAdmin APIの6領域(注文・商品・顧客・割引・コンテンツ・分析)に入るか
- 作業する端末はデスクトップのウェブブラウザか
- スタッフに App development > Develop 権限を付与できるか
- 外部サービスとのデータ往復が必要か
- 自動化の実行回数は月にどれくらいか(課金軸の選択に直結します)
- Liquidを書ける担当者がいるか
- 生成アプリをインストールする前に、テスト環境で顧客向けデータへの影響を確認できるか
まとめ
判断の順番は次の4つです。
- まず自ストアのプランを確認する。ヘルプセンターがプラン要件を明記しているのはアプリ生成だけで、対象はGrow以上です。ここで選択肢が分かれます。
- 作りたいものが管理画面の中で完結するかを判定する。顧客に見える処理、テーマ、チェックアウトが絡むなら、生成アプリは候補から外れます。
- 外部サービスとの連携が必要かを判定する。必要ならSidekickではなく自動化アプリです。
- 自動化アプリを選ぶ段階では、月額ではなく課金軸を見る。Mechanicはプラン連動の定額、MESAは月間タスク数です。実行回数の見通しが立つかどうかで、どちらが安いかが逆転します。
料金と機能は変更される可能性があります。導入前に、各アプリのShopify App Storeページとヘルプセンターの最新の記載を確認してください。
参考
自分が所有する2つのShopifyストアの間を、Shopifyは何も同期しません。ロケーションは1ストアの中の概念、Marketsは1ストアから多国を売る機能、Shopify Collectiveはドロップシップの関係で、1商品100バリエーションの上限があり、アンインストールすると取り込んだ在庫が0になります。つまりマルチストア同期は完全にアプリの領域なのですが、実在する6本のアプリは6種類の別々の単位で課金しています。Syncioは宛先ストアに商品数、供給元に注文数。Tipoは宛先ストアの全バリエーション数(同期していない分も含む)。Synkroの月25ドルプランは接続ストアごとに25ドル。Trunkは全チャネル合計の直近3か月平均注文数。同一条件の2ストア構成で見積もると、月額はおよそ10ドルから119ドルまで開きます。2026年9月2日にShopify App Storeで確認しました。