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「Shopifyでチェックアウトにアップセルを出すにはShopify Plusが必要」。この説明は、半分だけ正しく、実務上はかなり誤解を招きます。
Plusが必要なのは、Information・配送・支払いというチェックアウト本体の3ステップにアプリのブロックを差し込む場合だけです。購入完了後に表示されるサンクスページと注文状況ページ、そして決済直後に1画面だけ挟む購入後アップセルは、Basicプランから使えます。
ただし購入後アップセルには、公式ドキュメントに列挙された非対応条件が9項目あり、そのうちのいくつかは日本のストアでもよく使われる決済方法です。Apple Payで決済した顧客には、購入後アップセルの画面が表示されません。
この記事では、Shopifyヘルプセンターとshopify.devの記載だけを根拠にプラン要件と表示条件を整理し、そのうえでアップセルアプリ3本を比較します。調査日は2026年9月1日です。
先に結論
Basic・Grow・Advancedプランのストアは、商品ページ、カート、サンクスページ、注文状況ページ、そして購入後アップセルの5か所でアップセルを出せます。チェックアウト本体の3ステップだけが使えません。
購入後アップセルを主戦場にするストアは、決済方法の内訳を先に確認してください。Apple Pay、Google Pay、Amazon Pay、Klarna、Affirm、AfterPayで決済した注文には表示されません。ウォレット決済の比率が高いストアでは、施策の対象が想像より小さくなります。
コストを抑えたいなら、Upsell & Cross Sell — Selleasyが唯一、本番ストアで恒久的な無料枠(月50注文まで)を持っています。
日本語UIが必要なら、この3本ではCandy Rack • Upsell Cross‑sellだけです。
割引を組み合わせる施策を考えているなら、旧チェックアウト(checkout.liquid)のカスタマイズが残っていないか先に確認してください。残っていると使えない組み合わせがあります。
どこにアップセルを出せるのか、プラン別に整理する
Shopifyヘルプセンターには、チェックアウトのカスタマイズがプランごとにどこまで可能かを示す表が掲載されています。アップセルに関係する部分を抜き出します。
| アプリ拡張の種類 | Basic以上 | Shopify Plus |
|---|---|---|
| 購入後(post-purchase)アプリ拡張 | 使える | 使える |
| サンクスページ・注文状況ページ向けUI拡張 | 使える | 使える |
| 顧客アカウントページ向けUI拡張(全ページ) | 使える | 使える |
| Information・配送・支払いページ向けUI拡張 | 使えない | 使える |
| Shopify Functionsを使う公開アプリ | 使える | 使える |
| Shopify Functionsを使うカスタムアプリ | 使えない | 使える |
| Checkout Branding API | 使えない | 使える |
ヘルプセンターの表現は「標準的なチェックアウトのカスタマイズは、Basicプラン以上のすべてのページで利用できます。高度なチェックアウトのカスタマイズ機能は、Shopify Plusプランでのみ利用できます」です。
つまり「アップセルアプリを入れてもPlusじゃないと動かない」わけではありません。動かないのは、チェックアウト本体の3ステップに描画される部分だけです。
もうひとつ、覚えておくと役立つ上限があります。同じハイライトエリアに配置できるアプリは最大3つです。shopify.dev側にも「マーチャントは同じブロックターゲットの位置に最大3つの拡張を追加できる」と記載されています。アップセルアプリを複数併用しようとすると、この上限に当たります。
購入後アップセルが表示されない9つの条件
購入後アップセルは、決済完了後・注文確認ページ表示前に1画面を挟む仕組みです。ワンクリックで追加購入でき、既存注文に商品を追加する形になるため送料も再計算されません。効果が出やすい施策ですが、shopify.devのドキュメントには制限が細かく列挙されています。
1. まだベータ扱いで、本番利用には申請が必要
ドキュメントには「購入後チェックアウト拡張はベータです」と明記されています。開発ストアでは制限なく使えますが、本番ストアで使うにはアクセス申請が必要です。
2. 受諾できるのは1チェックアウトあたり最大3件
「顧客は1回のチェックアウトにつき最大3件の購入後オファーを受諾できます」と記載されています。
3. 作れる購入後ページは1つだけ
「購入後ページは1つしか作成できません」。単一ページ内のページネーションで複数画面に見せることは可能です。
4. 購入後アプリは同時に1つしか使えない
Shopifyヘルプセンターには「購入後の機能を追加するチェックアウトアプリは、一度に1つしか使えません」と書かれています。複数インストールしている場合は、設定画面の「購入後ページ」セクションで使うアプリを1つ選びます。
5. ウォレット決済と分割払いでは表示されない
ここが実務上いちばん影響が大きい制約です。ドキュメントには、分割払いやウォレットサービスでチェックアウトした場合に購入後ページが表示されないと記載され、例としてKlarna、Affirm、AfterPay、Apple Pay、Amazon Pay、Google Payが挙げられています。
さらに、ギフトカードまたはクレジットカード以外の決済方法での初回購入も対象外です。
6. CVN/CVVの保持を要求する決済プロバイダでは動かない
サードパーティ決済プロバイダのうち、CVN/CVVの保持を要求するものは非対応です。例としてBraintree、Payflow Pro、PayPal Payments Pro、Ewayが挙げられています。
7. 関税・複数通貨・現地配送の注文では表示されない
関税を含む注文、複数通貨を含む注文、現地配送(local delivery)の注文はいずれも対象外です。越境販売を行うストアでは、この条件で対象注文が絞られます。
8. 最低注文金額$0.50、かつオンラインストア経由の注文のみ
注文金額が$0.50未満の場合と、オンラインストア販売チャネル以外から入った注文では表示されません。
9. 計測が正確に取れない
これは制約というより副作用ですが、影響は小さくありません。ドキュメントには、Shopify Pixel APIを使う外部解析(Google Analytics、Facebook、Pinterest、Snap)は初回購入分のpurchaseイベントと金額しか記録しないと書かれています。ScriptTagやadditional scriptsを使う解析は注文状況ページでしか発火しないため、コンバージョンデータが不完全になります。
購入後アップセルで積み上げた売上が、広告プラットフォーム側のROASに反映されないということです。
あわせて知っておきたい仕様
購入後フローの最中は、全注文にフルフィルメントホールドがかかります。顧客が注文状況ページを訪問したとき、または未完了なら最初のチェックアウト送信から1時間後に解除されます。出荷を急ぐ運用のストアでは、この1時間が効いてきます。
割引を組み合わせるときの上限
アップセル施策は割引とセットで設計されることが多いため、割引側の上限も確認しておきます。Shopifyヘルプセンターの「割引の組み合わせ」ページに、数値が明記されています。
自動割引は、ストア全体で有効にできるのが最大25個です。この25個にはアプリ由来の割引も含まれます。そして「同一注文に適用できる自動割引も最大25個」です。
割引コードは、同一注文で商品割引と注文割引を合わせて最大5個、送料割引コードは1個までです。
組み合わせの可否も決まっています。
| 組み合わせ | 可否 |
|---|---|
| 注文割引+送料無料割引 | 全マーチャント可 |
| 商品割引+送料無料割引 | 全マーチャント可 |
| 商品割引+別商品への商品割引 | 全マーチャント可 |
| 商品割引+注文割引 | 対象マーチャントのみ |
| 注文割引+注文割引 | 対象マーチャントのみ |
| 同一商品への商品割引+商品割引 | Shopify Plus限定 |
| 送料割引+送料割引 | 不可 |
ここで言う「対象マーチャント」の条件が重要です。ヘルプセンターは2つ挙げています。「ストアがcheckout.liquidのカスタマイズや機能を一切使っていないこと」と「Licensifyアプリを使っていないこと」です。
つまり、旧チェックアウトのカスタマイズが残っているストアでは、「商品割引+注文割引」と「注文割引+注文割引」の組み合わせが使えません。アップセル施策の割引設計が、旧チェックアウト資産の残存によって直接制約されます。
なお、Shopify以外のチャネル(Facebook、Instagram、Googleなど外部チェックアウト)では割引の組み合わせ自体が機能しません。有効なのはオンラインストア、Storefront API、Shopify POSの3つだけです。
補足として、Buy X get YはPlus以外の全プランで、対象商品が追加の商品割引の対象外になります。「2点買うと1点無料」の施策に別のクーポンを重ねる設計は、Plus以外では成立しません。
スクリプトタグは全ストアでサンセット済み
関連して、旧来の実装方法についても状況が変わっています。shopify.devのcheckout.liquidのドキュメントによれば、checkout.liquidとadditional scriptsはサンクスページ・注文状況ページで2025年8月28日にサンセットされました。Script tagsは同ページでPlusストアが2025年8月28日、非Plusストアが2026年8月26日にサンセットされています。
2026年9月1日時点では、すべてのストアでスクリプトタグ方式が終了しています。「サンクスページにスクリプトを貼ってアップセルを出す」という古い手法は、もう使えません。
アップセルアプリ3本の比較
Shopify App Storeの「Upsell and cross-sell」カテゴリには2026年9月1日時点で1,076本が登録されています。ここではレビュー件数の多い3本を比較します。
| アプリ名 | 評価(件数) | Built for Shopify | 日本語UI | 課金単位 | 本番ストアの無料枠 | 有料の起点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Upsell.com ‑ ReConvert Upsell | 4.8(2,806) | なし | なし | 月間注文数またはアップセル売上 | なし(開発ストアのみ無料) | $4.99/月 |
| Candy Rack • Upsell Cross‑sell | 4.9(223) | あり | あり | ストアの月間オンラインストア注文数 | なし(トライアル・開発ストアのみ) | $29.99/月 |
| Upsell & Cross Sell — Selleasy | 4.9(2,537) | あり | なし | ストアの総注文数 | 月50注文まで | $9/月 |
比較表から読み取れること
**課金単位が3本とも違います。**これがこのカテゴリの比較を難しくしている最大の理由です。
Upsell.com ‑ ReConvert Upsellは二軸です。掲載ページの各有料プランに「月間注文数またはアップセル売上が増えるにつれて料金が上がります」と明記されています。Upsell Basic($4.99/月)は「月間50注文またはアップセル売上$50まで」、Upsell Growth($9.99/月)は「月間100注文または$100まで」、Upsell Business($19.99/月)は「月間200注文または$200まで」です。注文数が少なくてもアップセルが好調なら課金が上がる設計です。
Candy Rack • Upsell Cross‑sellは、ストアの月間オンラインストア注文数だけで決まります。Lite($29.99/月)が0〜50注文、Starter($39.99/月)が51〜200注文、Growth($59.99/月)が201〜500注文です。各プランに「アップセル注文数と売上は無制限」と明記されており、ReConvertとは正反対の設計です。アップセルが成功しても料金は上がりません。
Upsell & Cross Sell — Selleasyは、ストアの総注文数で決まります。4つのプランすべてに「ストアの総注文数が考慮されます」と書かれています。アプリ経由の注文数ではない点に注意が必要です。Starter Tier I(無料)が月50注文まで、Tier II($9/月)が500注文まで、Tier III($19/月)が1,000注文まで、Tier IV($29/月)が1,000注文超です。
**本番ストアで恒久的に無料で使えるのはSelleasyだけです。**ReConvertの無料プランは掲載ページに「開発ストア向け」と明記されており、Candy Rackの無料プランも「トライアルおよび開発ストア向け」です。3本の中でSelleasyだけが「月50注文を超えた場合にのみ課金」と記載しています。
**月間注文数が同じでも、金額は大きく変わります。**月100注文のストアを例にすると、Selleasyは$9、ReConvertはUpsell Growth相当で$9.99、Candy RackはStarterで$39.99です。月500注文なら、Selleasyが$9のまま、Candy Rackが$59.99です。
**Built for Shopifyバッジを持つのはCandy RackとSelleasyです。**レビュー件数が最も多いReConvertは保有していません。
**日本語UIがあるのはCandy Rackだけです。**掲載ページの対応言語欄に日本語を含むのはCandy Rackのみで、ReConvertとSelleasyは日本語を含みません。Candy Rackは開発元がチェコのDigismoothieで、掲載ページに「EUで開発、機微データは収集せず、GDPR完全準拠」と記載されています。
**3本とも「Works with: Checkout」の表記があります。**ただしこの表記だけでは、そのアプリのブロックがチェックアウト本体用のターゲットなのか、サンクスページ用のターゲットなのかを区別できません。ReConvertは自らの説明文で「checkout upsell(Shopify Plus限定)」と明記しています。チェックアウト本体での表示を要件にする場合は、各アプリのドキュメントで確認する必要があります。
比較記事によく載っているアプリの現状
日本語の比較記事で頻繁に取り上げられている「In Cart Upsell(ICU)」は、2026年9月1日時点でShopify App Storeの掲載ページに「このアプリは現在Shopify App Storeで利用できません」と表示されています。評価、レビュー件数、料金、掲載開始日のいずれも掲載ページから確認できません。導入候補としては扱えない状態です。
ケース別の選び方
月間注文数が50件以下
Upsell & Cross Sell — Selleasyの無料プランで足ります。商品ページとカートのアップセル、購入後アップセル、サンクスページのアップセル、AIレコメンド50回が無料枠に含まれています。
アップセルの成果が伸びても料金を固定したい
Candy Rack • Upsell Cross‑sellが合います。課金がストアの注文数だけで決まり、アップセル経由の注文数と売上は無制限だと明記されています。ReConvertはアップセル売上が増えると課金が上がる設計なので、逆の性質です。
日本語UIで設定したい
Candy Rack • Upsell Cross‑sellが唯一の選択肢です。ただし最低料金が$29.99/月と、3本の中で最も高い起点になります。
ウォレット決済の比率が高い
購入後アップセル以外の設置場所を主軸にしてください。Apple Pay、Google Pay、Amazon Payで決済した注文には購入後ページが表示されないため、商品ページ、カート、サンクスページでの施策のほうが対象を広く取れます。
チェックアウト本体にアップセルを出したい
Shopify Plusが必要です。それ以外のプランでは、この位置にアプリのブロックを描画できません。
導入前チェックリスト
- 自店の決済方法の内訳を確認したか(ウォレット決済の比率が購入後アップセルの対象範囲を決める)
- 購入後アップセルを使う場合、本番利用のアクセス申請が必要なことを把握しているか
- 購入後フロー中のフルフィルメントホールド(最大1時間)が出荷運用に影響しないか
- 購入後アップセルの売上が広告計測に反映されないことを、社内の評価指標に反映してあるか
- 自動割引がすでに何個有効か確認したか(アプリ由来を含めて25個が上限)
- checkout.liquidのカスタマイズが残っていないか(残っていると使えない割引の組み合わせがある)
- 課金単位が「アプリ経由の売上」か「ストアの総注文数」かを確認したか
- 無料枠が本番ストアで使えるものか、開発ストア限定かを確認したか
- 同じ位置にアプリを複数置く場合、3つという上限を超えないか
- 設定を担当するメンバーが使える言語のUIか
まとめ
判断の順序は4つです。
**1. Plusが必要な範囲を正確に把握する。**Plus限定なのはInformation・配送・支払いの3ステップだけです。サンクスページ、注文状況ページ、購入後アップセルはBasicプランから使えます。
**2. 購入後アップセルは決済方法で対象が絞られる。**ウォレット決済と分割払いでは表示されません。施策を組む前に、自店の決済内訳を確認してください。
**3. 課金単位を揃えて比較する。**ReConvertは注文数とアップセル売上の二軸、Candy Rackはストアの注文数、Selleasyはストアの総注文数です。同じ月間注文数でも金額が4倍以上変わります。
**4. 割引側の上限を先に確認する。**自動割引は25個まで、割引コードは同一注文で5個までです。旧チェックアウトのカスタマイズが残っていると、使えない組み合わせがあります。
料金と機能は変更される可能性があります。導入前に、各アプリのShopify App Store掲載ページで最新の内容を確認してください。
Shopifyの割引併用は「商品・注文・配送」の3クラスで管理され、組み合わせは6種類しかありません。うち2種類は条件を満たしたストア限定、1種類はShopify Plus限定です。自動割引は25個まで、顧客が使えるコードは商品・注文で5個+配送1個まで。Buy X Get Yの対象商品はPlus以外では追加の商品割引を受けられません。二重割引の計算順序と、Discounty・Regios Automatic Discountsの課金単位がまったく違う話まで整理しました。調査日は2026年9月1日です。