この記事でわかること
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「Shopifyで卸売をやるならShopify Plusが必要」。長いあいだ正しかったこの説明は、2026年4月2日を境に成立しなくなりました。
Shopifyは同日のChangelogで、企業アカウント、支払サイト(Net条件)、数量価格、PO番号といったネイティブB2B機能を、Basic・Grow・Advancedプランでも追加費用なしで使えるようにしたと告知しています。卸売価格を出すためだけにアプリを入れていたストアにとって、前提が変わりました。
ただし「全部が開放された」わけではありません。Changelogに書かれているPlus限定は4項目ですが、ヘルプセンターの機能表を実際に読むと、プランで差がつく項目は8つあります。そしてそのうち2項目は「Plus限定」ではなく「Advanced以上」という、告知に出てこない別の線が引かれています。
この記事では、Shopifyヘルプセンターとchangelog.shopify.comの記載だけを根拠に境界線を引き直し、そのうえで卸売アプリ3本を比較します。調査日は2026年9月1日です。
先に結論
卸売価格を出したいだけのストアは、まずアプリを止めてください。顧客企業ごとの価格表、数量による段階価格、最小注文数、Net 30の支払サイトは、Basicプランのネイティブ機能で追加費用なしに設定できます。
取引先が4社以上で、それぞれ別の価格を出したいなら、ここで止まります。Basic・Grow・Advancedで作れるB2Bカタログは3つまでで、しかも企業に直接割り当てることができません。顧客単位の価格設定が本当に必要ならPlusか、アプリになります。
B2B専用の見せ方をしたいなら、Advanced以上が必要です。Shopify Markets経由のコンテキストチェックアウトとコンテキストストアフロントは、BasicとGrowでは使えません。これはChangelogには書かれていない条件です。
とにかく費用を抑えたいなら、BSS B2B卸売価格設定が3本のなかで唯一、日本語UIと恒久的な無料プランの両方を持っています。
注文が月5件を超えるかどうかは、SparkLayer B2B & Wholesaleを検討する場合の分岐点です。このアプリだけ課金軸が月間B2B注文数で、無料枠は月5件です。
Shopify標準のB2Bはどこまで無料になったのか
2026年4月2日のShopify Changelog「Key B2B features now available on non-Plus plans」には、Basic・Grow・Advancedのマーチャントが管理画面からネイティブB2B機能で卸売販売を始められること、そして対象に「最大3件のアクティブなB2Bカタログ(Markets経由で割り当て)、企業プロフィール、支払条件、ボリューム価格、ACH決済(米国のみ)、保管済みクレジットカード」が含まれることが明記されています。
ヘルプセンターの「Shopify B2B features by plan」の表を見ると、Basicプランでも使える機能はもっと広い範囲に及びます。
- 企業、企業ロケーション、ロケーションレベルの権限(ロケーション管理者と発注のみ)
- 数量ルール(最小・最大・増分)と数量価格ブレイク
- Net条件、支払いリマインダー、保管済みクレジットカード
- 下書き注文から請求書、チェックアウトから下書きへの変換、簡単再注文、PO番号
- 営業担当者の権限設定
- Tradeテーマ、クイック注文リスト
- B2Bオブジェクトを使ったShopify Flowの自動化
つまり「取引先を企業として登録し、卸価格を出し、締め日払いで受注し、発注書番号を記録する」という卸売の基本動作は、Basicプランのまま全部できます。
見落としやすい前提条件
ヘルプセンターには、この表の直前に条件が書かれています。
To use B2B catalog features on the Basic, Grow, or Advanced plans, your store must be using new Shopify Markets.
Basic・Grow・AdvancedでB2Bカタログ機能を使うには、ストアが新しいShopify Marketsを使っている必要がある、という条件です。旧来のMarkets設定のまま運用しているストアは、B2B機能を試す前にここを確認することになります。
Plus限定で残った項目と、Advanced以上という別の線
Changelogが挙げているPlus限定は「顧客別価格の無制限カタログ」「企業・ロケーションへのカタログ直接割り当て」「分割払い」「デポジット」の4つです。しかしヘルプセンターの機能表では、プランで差がつく項目は8つあります。
| 機能 | Basic | Grow | Advanced | Plus |
|---|---|---|---|---|
| B2Bカタログ数 | 3 | 3 | 3 | 無制限 |
| 企業・ロケーションへのカタログ直接割り当て | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ |
| デポジット要件(企業) | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ |
| デポジット要件(下書き注文) | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ |
| 分割払い | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ |
| フルフィルメント単位の支払いリクエスト | ✘ | ✘ | ✘ | ✔ |
| コンテキストチェックアウト(Markets利用) | ✘ | ✘ | ✔ | ✔ |
| コンテキストストアフロント(Markets利用) | ✘ | ✘ | ✔ | ✔ |
表から読み取れることを整理します。
第一に、BasicとGrowの差はB2B機能に関してはゼロです。表に載っている全項目で、Basicで使えるものはGrowでも使え、Basicで使えないものはGrowでも使えません。「卸売のためにGrowへ上げる」という判断には根拠がありません。
第二に、B2Bで意味のある最初の分岐はAdvancedです。コンテキストチェックアウトとコンテキストストアフロントは、B2B顧客に対して小売とは違う見せ方・買わせ方をするための機能で、Advanced以上でしか使えません。B2Bと小売を1つのストアで運用し、法人ログイン後は別の体験にしたい場合、Basic・Growでは実現できません。これはChangelogの告知文に含まれていない条件です。
第三に、残る6項目のうち4項目は支払いに関するものです。デポジット(前受金)、分割払い、フルフィルメント単位の支払いリクエスト。受注生産や大口案件で「まず内金、出荷ごとに請求」という運用をしているストアは、ここでPlusかアプリのどちらかを選ぶことになります。
カタログ3個の上限は「マーケットへの割り当て」で消費される
ヘルプセンターには、カタログ数の上限について注意書きがあります。
On the Basic, Grow, and Advanced plans, you can assign up to 3 active catalogs across all your B2B markets. Assigning 3 catalogs to one B2B market uses the full limit.
上限は「作れるカタログの数」ではなく「全B2Bマーケットにまたがって割り当てられるアクティブなカタログの数」です。1つのB2Bマーケットに3つ割り当てた時点で枠を使い切り、別のマーケットにカタログを追加するには、既存の割り当てを削除するかドラフトに戻す必要があります。
国内向けと海外向けでB2Bマーケットを分けている場合、実質的に使える価格パターンは想定より少なくなります。
アプリが必要になる条件
標準機能が広がったぶん、アプリを検討する理由は絞り込まれました。整理すると次のようになります。
取引先ごとに違う価格を出したい。企業やロケーションへのカタログ直接割り当てはPlus限定です。取引先が4社を超え、それぞれ別の価格表が要るなら、標準機能では足りません。
前受金や分割請求が必要。デポジットと分割払いはPlus限定です。
Basic・Growで法人向けの見せ方を変えたい。コンテキストストアフロントがAdvanced以上なので、下位プランでは商品や価格の出し分けをアプリで代替することになります。
申請フォームと承認フローを回したい。取引先が自分で申請し、審査して承認したらタグを付けて卸価格を有効化する、という一連の流れは標準の管理画面には用意されていません。
卸専用の送料や免税を設定したい。B2B専用の配送ルール、税込税抜の表示切り替え、免税設定は、アプリ側の機能として提供されているものです。
Shopify App Storeで「B2B wholesale」を検索すると、2026年9月1日時点で1,084件のアプリが表示されます。そのなかから課金軸の異なる3本を選び、同じ軸で比較します。
卸売アプリ3本の比較
すべて2026年9月1日時点のShopify App Storeの表示です。
| SparkLayer B2B & Wholesale | BSS B2B卸売価格設定 | B2B Wholesale Hub | |
|---|---|---|---|
| 開発者 | SparkLayer | BSS B2B Suite | Orbit |
| 評価(件数) | 4.9(361) | 4.9(1,109) | 4.7(663) |
| Built for Shopify | なし | あり | あり |
| 課金軸 | 月間B2B注文数 | 機能階層 | 機能階層 |
| 無料プラン | あり(月5注文) | あり | なし |
| 有料の起点 | $49/月 | $29/月 | $39/月 |
| 最上位 | $299/月 | $99/月 | $99/月 |
| 日本語UI | なし | あり | なし |
| 日本語での直接サポート | なし | なし | なし |
| App Store公開日 | 2021年4月28日 | 2020年9月18日 | 2015年1月6日 |
比較表から読み取れることは3つあります。
課金軸が違うため、単純な月額比較が成立しません。SparkLayerだけが月間B2B注文数で課金され、無料5件、$49で50件、$149で100件、$299で150件という刻みです。BSSとB2B Wholesale Hubは注文数に関係なく機能階層で課金されます。月間B2B注文が20件のストアならSparkLayerの$49プランで足りますが、120件になると$299プランが必要になり、BSSの最上位$99の3倍を超えます。
逆転ラインは注文数ではなく機能要件で決まります。SparkLayerの$149以上のプランには、PDF請求書のダウンロード、営業担当者ポータル、見積もりエンジン、Xero・QuickBooks Online連携、APIアクセスといった、BSSやB2B Wholesale Hubの上位プランにも並んでいない機能が入ります。営業担当が電話で受注し、見積もりを出し、会計ソフトに流す、という運用をしているなら、注文数が少なくてもSparkLayerの上位プランが候補になります。
日本語UIで運用できるのは3本中1本です。BSS B2B卸売価格設定は日本語を含む20言語に対応しています。SparkLayerとB2B Wholesale Hubは英語のみで、App Storeにも「このアプリは日本語に翻訳されていません」と表示されます。ただし3本とも「この開発者は日本語での直接的なサポートを提供していません」と記載されており、トラブル時のやり取りは英語になります。
SparkLayer B2B & Wholesale
どの課題に向くか:営業担当者が介在する卸売。見積もり、価格交渉、担当者による代理発注といった、フォームだけでは回らない業務がある場合です。
主な機能:営業担当者用ポータル、見積もりの管理から注文への変換、承認ワークフロー付きの登録フォーム、顧客ごとの価格表と数量ルール。無料プランでも価格表3件、支払サイト設定、無料オンボーディングコールが付きます。
注意点:課金軸が月間B2B注文数のため、成長すると費用の増え方が急です。無料プランは月5注文、$49のスターターで50注文、$149のグロースで100注文、$299のプロで150注文が上限として表示されています。見積もり機能は$299のプロプラン、APIアクセスも同プランです。日本語UIはありません。
料金:2026年9月1日時点で、無料/$49/$149/$299の4段階。有料プランには14日間の無料体験が付きます。
向いているストア:B2B注文が月100件以下で、営業担当者ポータルや見積もりが必要な、英語での運用に抵抗がないストア。
BSS B2B卸売価格設定
どの課題に向くか:日本語の管理画面で、価格設定と申請フローを完結させたいストア。
主な機能:顧客グループごとの価格設定、数量割引と数量階層ルール、B2Bカタログ、承認フローと自動タグ付けを備えた登録フォーム、MOQと注文上限、税込税抜の切り替えと免税設定、卸売専用の送料設定。
強み:無料プランでもB2Bカタログを無制限に作れると記載されています。標準機能のカタログ3件という上限に当たっているストアにとっては、この点が直接の代替になります。日本語UIがあり、Built for Shopifyバッジも取得しています。
注意点:無料プランでは登録フォームが1件、数量割引・数量階層ルールも1件までです。顧客ごとの個別価格設定は$49のADVANCED、顧客ごとの価格表とERP連携は$99のPLATINUMまで上がります。開発者の所在地はベトナムで、日本語での直接サポートはありません。
料金:2026年9月1日時点で、無料/$29/$49/$99の4段階。年払いで10%割引、有料プランに14日間の無料体験。
向いているストア:日本語で設定を完結させたい、価格パターンが多い、費用を月$100以内に抑えたいストア。
B2B Wholesale Hub
どの課題に向くか:顧客タグを起点にした、小売と卸売の並行運用。
主な機能:タグを付けた顧客グループへの卸売価格またはカスタム価格、カート金額・コレクション・商品・バリエーション別の最小注文要件、小売顧客に対する卸売商品の非表示とロック、段階的な数量割引とクイック注文フォーム、承認時にタグを自動付与する登録フォーム。
強み:2015年1月公開で、3本のなかで最も長く運用されています。レビューには10年近く使っているストアの投稿もあります。
注意点:3本のなかで唯一、恒久的な無料プランがありません。最安が$39/月で、Net 30・Net 15の掛け売り、バリエーション別のカスタム価格、ボリュームディスカウント、最小注文要件は$69のプロフェッショナル以上です。商品の表示・ロックと登録フォームエディターは$99のプレミアムになります。評価は4.7で、★1が33件(全663件中)と3本のなかでは最も高い比率です。レビューには、タグ管理に相応の手作業が必要という指摘もあります。
料金:2026年9月1日時点で、$39/$69/$99の3段階。年払いで10%割引、14日間の無料体験。
向いているストア:小売と卸売を1ストアで運用し、顧客タグによる出し分けで足りるストア。
ケース別の選び方
まずアプリを止めるべきストア
取引先が3社以下で、価格表も3パターン以内。締め日払いとPO番号があれば足りる。この条件なら、Basicプランの標準B2B機能で完結します。追加費用はかかりません。新しいShopify Marketsに移行済みかだけ確認してください。
費用を抑えて日本語で運用したい
BSS B2B卸売価格設定。無料プランでB2Bカタログを無制限に作れる点が、標準機能の3件上限に対する直接の回答になります。日本語UIがあるのも3本中このアプリだけです。
営業担当者が介在する卸売
SparkLayer B2B & Wholesale。営業担当者ポータルと見積もりエンジンは他の2本の機能一覧に並んでいません。ただし月間B2B注文数で課金されるため、受注件数の見通しを先に立ててください。
小売と卸売を1ストアで並行運用
B2B Wholesale Hub。顧客タグを軸にした設計で、小売顧客に卸売商品を見せない運用が組めます。ただし無料プランがないので、最初から月$39以上の固定費が発生します。
前受金・分割請求が必要
3本のいずれにも、Shopifyのデポジットや分割払いに相当する機能は確認できませんでした。この要件が外せないなら、Shopify Plusへの移行を検討することになります。
導入前チェックリスト
- 新しいShopify Marketsに移行済みか(未移行だとBasic・Grow・AdvancedでB2Bカタログが使えません)
- 必要な価格パターンは3つ以内に収まるか(収まるなら標準機能で足ります)
- B2Bマーケットを複数持つ予定はあるか(カタログ3件の上限はマーケットをまたいで共有されます)
- 法人向けに見せ方を変える必要があるか(あればAdvanced以上)
- 前受金・分割請求は必須要件か(必須ならPlus)
- 月間のB2B注文数はどれくらいか(SparkLayerを選ぶ場合の費用に直結します)
- 管理画面を日本語で使う必要があるか
- サポートが英語になることを受け入れられるか
- 無料体験期間中に、実際の取引先1社で受注から請求まで通せるか
まとめ
判断の順番は次の4つです。
- まず標準機能で足りるか確認する。企業アカウント、数量価格、Net条件、PO番号はBasicプランで無料です。
- 足りない理由を1つに特定する。「カタログ3件では足りない」「Basic・Growで見せ方を変えたい」「前受金が必要」は、それぞれ答えが違います。
- カタログ数が理由ならアプリ、見せ方が理由ならAdvanced、前受金が理由ならPlus。この3つは代替関係にありません。
- アプリを選ぶ段階では、月額ではなく課金軸を見る。月間B2B注文数の見通しが立たないまま注文数課金のアプリを選ぶと、成長したときに費用が跳ねます。
料金と機能は変更される可能性があります。導入前に、各アプリのShopify App Storeページとヘルプセンターの最新の記載を確認してください。
参考
Shopifyの管理画面側の住所検証は、全プランで常時有効、無料で、米国に対応している。チェックアウト時の検証もトグル1つで有効にできる。そのうえで公式ドキュメントは、サードパーティの住所検証アプリを同時に使うと提案が競合してチェックアウトのコンバージョンを下げうるため、どちらか一方にせよと明記している。ここでカテゴリの見え方が変わる。アプリは配送可能性の判定を二重化するためのものではなく、Shopifyの検証がやらない「私書箱の拒否」「部屋番号の必須化」といったポリシー強制のためのものだ。2026-09-02時点で米国App Storeの実在アプリ4本を確認した。月額4.99ドルの定額、1注文あたり0.04ドル、そしてShopifyの請求とは別に契約が必要なものまで幅がある。