この記事でわかること
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自動化アプリを探し始めると、たいてい最初に「Shopify Flowで足りるのでは」という疑問にぶつかります。無料で、Shopify自身が提供していて、注文やお客様のタグ付けから外部サービスへの通知まで扱えるからです。
ところが調べても、どこまでできるのかがはっきりしません。「Plus限定」と書いている記事もあれば「全プランで使える」と書いている記事もあります。「AIと連携できる」という説明も見かけますが、どのAIに何を渡しているのかまで書いてあるものは多くありません。
**結論から言うと、Shopify Flow自体は無料でBasicプラン以上なら使えます。ただしプランによって消える機能が3か所あり、そのうちの1つが外部連携の要になるアクションです。**そしてAI連携として提供されている機能は、自分でOpenAIのAPIキーを用意して、旧世代のAPIを呼ぶ仕組みになっています。
この記事では、Shopifyヘルプセンターの記載だけを使って、Flowで自動化できる範囲と、その外側に何があるのかを確定させます。自動化アプリの検討は、この線引きの後にすると判断が早くなります。調査日は2026年8月31日です。
先に結論
Shopify Flowは無料アプリで、Basic、Grow、Advanced、Plusのいずれでも使えます。 かつてPlus限定だった時期の情報が残っているだけで、現在は違います。
ただしBasicプランでは、外部サービスへHTTPリクエストを送るアクションが使えません。 SlackやGoogleスプレッドシートといった専用コネクタは使えますが、それ以外の外部サービスへ自由に繋ぐ手段はBasicにありません。ここが最初の分岐点です。
AI連携はOpenAIのAPIキーを自分で用意する前提で、しかも旧世代のcompletions APIを呼びます。 既定モデルはgpt-3.5-turbo-instructで、チャット系モデルは指定するとエラーになります。「Flowを入れれば最新のAIが使える」という理解では実態と合いません。
JavaScriptを書くRun codeアクションはありますが、外部通信も乱数も時刻取得も使えません。 実行時間は5秒、メモリは10MBが上限です。
Shopify Flowは、もうPlus限定ではない
ヘルプセンターのプラン要件には、Shopify FlowはBasic、Grow、Advanced、Plusで利用できる無料アプリだと明記されています。使うにはApp StoreからShopify Flowアプリをインストールし、管理画面から開きます。
ワークフローは3つの部品で組み立てます。ワークフローを開始するトリガー、実行するかどうかを判定する条件、実際に何かを行うアクションです。これに加えて、Slackやスプレッドシートなど外部サービスの機能を使うためのコネクタがあります。
トリガーはストア内のイベント、特定の日時、サードパーティアプリ内の外部イベントのいずれかです。条件はトリガーとなったイベントのプロパティに加えて、注文、商品、お客様といった関連オブジェクトのプロパティも参照できます。アクションはストア内のデータを変更したり、ワークフロー内のデータを加工したり、外部アプリやサービスに対して何かを行ったりします。
ヘルプセンターの例では、「注文が作成されたら」というトリガーに対して「支払総額が200ドルを超えているか」という条件を置き、注文タグの追加、お客様タグの削除、フルフィルメントの保留、メール送信といったアクションを繋ぎます。
プランで差がつく3か所
ここが実務上いちばん重要な部分です。ヘルプセンターは、ほとんどの機能は全プランで使えるとしたうえで、3つの例外を挙げています。
Send HTTP requestアクションは、Grow、Advanced、Plusのみ。 Basicプランでは使えません。このアクションは任意のURLへHTTPリクエストを送るもので、専用コネクタが用意されていない外部サービスと繋ぐための唯一の汎用手段です。つまりBasicプランのFlowでできる外部連携は、Shopifyが用意したコネクタの範囲に限られます。
カスタムパートナーアプリが作成したタスクは、Plusのみ。 制作会社に自社専用のFlowタスクを作ってもらう運用は、Plusが前提になります。
利用量の上限はプランごとに異なります。 ヘルプセンターは、ストアごとの利用上限がそのプランのAPIレート制限に従うと説明しています。同じワークフローでも、プランによって処理できる量が変わります。
自動化アプリを比較する前に、まず自社のプランを確認してください。Basicプランなら、Flowで組める範囲は最初からかなり限定されています。
「AI連携」の実態
FlowのコネクタにはGenerate textという項目があり、これがAI連携にあたります。ヘルプセンターの説明は簡潔で、プロンプトをOpenAIへ送り、生成されたテキストを返すアクションだとされています。任意のトリガーと組み合わせられ、返るのはtextという単一のフィールドです。
使うにはまず、Flowの画面からOpenAIを検索して接続し、**自分のOpenAI APIキーを登録します。**つまり生成にかかる費用はOpenAI側で自分の契約に対して発生します。Flowが無料だからといって、この機能が無料で使えるわけではありません。
そしてページには注意書きが付いています。**Shopify Flowが呼んでいるのは、OpenAIのレガシーなcompletions APIです。**既定モデルはgpt-3.5-turbo-instructで、指定できるのは/v1/completionsに対応したモデルに限られます。チャット系のモデルを入れると「This is a chat model and not supported in the v1/completions endpoint.」というエラーになる、とトラブルシューティングにそのまま書かれています。
設定できるパラメータは、プロンプト、モデル、サフィックス、Temperature、Top P、Stop、Presence Penalty、Frequency Penalty、Logit Biasです。生成APIを直接触ったことがある人には馴染みのある構成ですが、逆に言えば、その水準の理解を前提にした機能です。
商品説明の下書き生成や問い合わせ内容の要約を自動化する用途は考えられます。ただし「最新の生成AIをノーコードで組み込める機能」という期待で見ると、実際に呼ばれているAPIの世代とは差があります。ここは事前に把握しておいたほうが安全です。
Run codeで書けること、書けないこと
FlowにはJavaScriptを実行するRun codeアクションがあります。前のステップのデータをGraphQLクエリで入力として受け取り、GraphQLのSDLで定義した型のデータを返します。条件分岐の判定や、後続ステップで使う値の加工に使えます。
制限がヘルプセンターに明記されており、これが実質的な設計制約になります。
対応するのはECMA2020のJavaScriptで、NodeJSやCommonJSのAPI、モジュールのインポートは使えません。**外部へのHTTP通信(fetch)はできません。**乱数と時刻に依存する関数も使えず、日時データはscheduledAtやcreatedAtのように入力として渡す必要があります。console.logは使えますが、console.infoやconsole.errorは使えません。
数値の上限も明示されています。入力クエリは5,000文字まで、出力スキーマも5,000文字まで、出力データとログ出力の合計は50KBまで、コードは50,000文字まで、実行時間は合計5秒まで、メモリは10MBまでです。
まとめると、Run codeは「ワークフローの中でデータを加工するための小さな計算領域」であって、外部と通信する処理を書く場所ではありません。外部連携はSend HTTP requestアクションが担当し、そちらはBasicプランでは使えない、という構造になっています。
外部連携をどう組むか
Flowが用意しているコネクタは、Googleスプレッドシートへの行追加、Slackへのメッセージ送信、そして前述のOpenAIによるテキスト生成です。この3つは接続設定をすれば、コードを書かずに使えます。
これ以外の外部サービスと繋ぐには、Send HTTP requestアクションを使います。GET、POST、PUT、PATCH、DELETE、HEAD、OPTIONSに対応し、ヘッダーとボディを自由に指定できます。
運用上、押さえておきたい挙動が3つあります。
レスポンスの待ち時間は最大30秒です。 30秒で応答が返らないとFlowは接続を閉じ、後でリトライします。
エラー時の挙動を選べます。 4XXのクライアントエラーと、5XXまたは429のサーバーエラーそれぞれについて、Retry(別の応答コードが返るかタイムアウトするまで最大24時間リトライ)、Fail(ワークフロー実行を失敗させる)、Ignore(エラーを無視して続行)から選択します。
認証情報はSecretsとして管理します。 Flowの設定画面でハンドル、値、説明を登録し、{{secrets.handle}}のようにLiquid変数として参照します。**Secretsの値はFlowの画面上に表示されず、ワークフロー実行ログからも伏せられます。**アクセストークンをワークフローに直接書かずに済む仕組みが用意されています。
なおShopifyのGraphQL Admin APIを叩きたい場合は、Send HTTP requestではなくSend Admin API requestアクションを使うよう案内されています。
運用に必要な機能は揃っているか
自動化は作って終わりではないので、運用側の機能も確認しておきます。ヘルプセンターに記載があるのは次のとおりです。
ワークフローは複製、ストア間のコピー、エクスポートとインポート、削除ができます。管理画面から個別の注文、下書き注文、お客様、商品に対して手動実行することもできます。実行後は、どのアクションが実行されたかを記録したワークフロー実行ログが残り、動作とパフォーマンスを監視できます。過去の実行に対する手動リトライでトラブルシューティングもできます。バージョン履歴の確認も可能です。
複数ストアを運用していて同じ自動化を横展開したい場合、エクスポートとインポート、ストア間コピーが使えるのは実務上の利点です。
自動化アプリを検討する前のチェックリスト
Flowで足りるかどうかを判断するための確認項目です。
- 自社のプランはBasicか、Grow以上か(BasicならSend HTTP requestが使えない)
- 繋ぎたい外部サービスが、Slack・Googleスプレッドシート・OpenAIの3つに含まれるか
- 含まれない場合、そのサービスがWebhookやREST APIを公開しているか
- 必要な処理が、外部通信なし・5秒以内・メモリ10MB以内で書けるか
- AI生成が必要な場合、OpenAIのAPIキーを用意でき、旧completions APIの品質で足りるか
- 導入予定のアプリが、Shopify Flow連携をApp Storeの「連携対象」に記載しているか
- 自社専用のFlowタスクを作ってもらう予定があるか(あるならPlusが前提)
- ワークフロー実行ログと手動リトライで、運用中の障害対応が回るか
- 複数ストアへ同じ自動化を展開する必要があるか
まとめ
Shopify Flowの範囲は、次の3点で切り分けられます。
第一に、プランです。BasicとGrow以上では、外部連携の自由度が根本的に違います。Basicで「Flowがあるから自動化アプリは不要」と判断すると、専用コネクタのない外部サービスに繋ぐ段階で行き詰まります。
第二に、外部通信をどこで行うかです。Send HTTP requestが担当し、Run codeは担当しません。この分担を理解していないと、Run codeで外部APIを叩く設計を考えてしまいます。
第三に、AI連携への期待値です。Generate textは自分のOpenAIアカウントで旧世代のAPIを呼ぶ機能であり、費用も品質もOpenAI側の契約に依存します。生成品質そのものを重視するなら、AI機能を主目的とした別のアプリを検討するほうが要件に合います。
この3点で線を引いたうえで、越えられない要件だけを自動化アプリに求めてください。Flowで組める範囲を先に確定させておくと、アプリの比較軸が「機能の多さ」ではなく「Flowでは届かない部分をどう埋めるか」に変わり、判断がはるかに速くなります。
機能と制限は更新されます。この記事の内容は2026年8月31日時点のShopifyヘルプセンターの記載に基づくものです。設計に入る前に最新の内容を確認してください。
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